日本経団連では、9月のワシントンに続き、10月11〜14日に、桑田芳郎貿易投資委員会企画部会長ほか企画部会のメンバー13名からなる第2次WTOミッションを、ジュネーブ、ブラッセルに派遣した。
ジュネーブでは、ラミーWTO新事務局長をはじめとする幹部(ハラWTO事務次長、ヨークサ事務次長、シン事務次長、ファルコナー農業交渉グループ議長、ヨハネソン非農産品市場アクセス交渉グループ議長、ド・メテオ・サービス交渉グループ議長)や、主要国代表部(日本、EC、中国、タイ、マレーシア)を訪問、ブラッセルでは欧州委員会、経済団体(欧州産業連盟、欧州サービス連盟)の関係者を訪問し、新ラウンド交渉の促進を働きかけるとともに、意見交換を行った。WTO幹部の一部については、米国ビジネス・ラウンドテーブル、欧州産業ラウンドテーブルと共同で訪問した。
同交渉は、9月以降も停滞が続き、12月の香港閣僚会議での大枠合意については、交渉当局の一部にも悲観的見方があった。しかし、10月10日以降開催された閣僚級の会合において、農業・鉱工業等主要分野に関し、主要国から具体的数値を盛り込んだ新提案が相次いで提出され、2国間の閣僚会談も活発化するなど、交渉は進展に向けて動き出している。
この時期にジュネーブを訪れたことに対して、各訪問先から、日本の経済界が交渉推進への支持を示すタイムリーな訪問であるとの評価を受けた。また、欧米経済界と共同でWTO幹部を訪問したことは、各国経済界が一体となって自由化を推進していることを明示するものとなった。
各国経済界との間では、香港合意実現を一層後押しするため、引き続き連携を強化し、香港閣僚会議の場でも協調して行動することを確認。こうした活動に対し、ラミー事務局長からは、「実務を通じて自由化の恩恵を最も理解する経済界が国内外に働きかけることが、交渉推進の大きな原動力となる」とのメッセージが伝えられた。
また、交渉当事者との意見交換を通じては、欧米はじめインド・ブラジル等の有力途上国を中心とした駆け引きが活発化するなかで、各国とも国家レベルでの戦略をもって交渉に臨んでいることを実感した。議論の方向が収斂しつつある現状において、日本政府は今すぐ総合戦略を構築し、迅速な決断を行う体勢を整えることが何よりも重要である。