日本経団連タイムス No.2787 (2005年10月13日)

企業倫理トップセミナー開く

−徹底へトップ自ら行動を、奥田会長が重要性強調


日本経団連は4日、東京・大手町の経団連会館で第4回企業倫理トップセミナーを開催した。日本経団連は毎年10月を「企業倫理月間」と定め、会員各社が企業倫理の徹底・浸透に向けて具体的な活動に取り組むよう呼びかけており、同トップセミナーは、その主要行事のひとつ。今回のトップセミナーには会員企業のトップや役員ら、約400名が出席し、パネル討議などを通じて、企業倫理の浸透・徹底のために企業トップが果たすべき役割を改めて確認した。

冒頭にあいさつした奥田会長はまず、企業不祥事が相次いでいる状況に遺憾の意を示すとともに、「このままでは問題となった企業の存在意義が問われるだけでなく、経済界全体への信頼も失われかねない」と警告。「企業倫理の徹底の第一歩は、トップの考えを社員に浸透させるとともに、現場の声にトップが耳を傾けること」であると述べ、企業トップ自らが行動することの重要性を改めて訴えた。

続いて国広総合法律事務所弁護士の國廣正氏が登壇し、企業倫理確立に向けての問題提起を行った。國廣氏は問題提起の第1として、不祥事多発の要因に、経済・社会の変化を挙げ、かつては行政の指導・事前規制に従っていれば見逃された業界の独自の慣習や違法行為などが、経済のグローバル化や規制緩和によって認められなくなったと指摘。今後は、自己責任が厳しく求められる自由競争の時代となるとした。
國廣氏は第2に、コンプライアンスを建前論や精神論ではなく、企業が生き延びていくためのリスク管理・内部統制の一環として考えるべきであることを強調。これを実現するためには、経営者が、リスクの存在を前提として、これを把握、制御していく体制を確立し、現場の問題意識をシステムとして解決し、会社全体の企業倫理を高めていくことが必要と述べた。
第3に國廣氏は、企業倫理確立のためには、トップの果たすべき役割が大きいことを指摘。社員は常に企業トップを注視しており、企業トップが本気で企業倫理確立に取り組み、ルールを守ることや、嘘をつかないこと、事故の芽を隠さないことなどを、自らの言葉で、継続的に社員に語りかける必要があるとした。
最後に國廣氏は、コンプライアンスと利潤追求を相反するものと考えることは間違いであると述べ、企業倫理を確立している会社は、社会から安心、安全な会社とみなされ、ブランド価値も上がっていくと説明した。

続いて行われたパネルディスカッションでは、武田國男・日本経団連副会長・企業行動委員長の司会で、東京電力会長の田村滋美氏、弘中総合法律事務所弁護士・前検事総長の原田明夫氏、國廣正氏が、(1)経済社会環境の変化 (2)企業経営者が持つべき心構え (3)企業の具体的取り組み方 (4)日本経団連としての課題――などについて論議した。パネリストからは、「経済社会環境の変化に対応するために、企業から生の情報を提供し、企業の外で判断してもらうという方法もある」(田村氏)、「経営トップは最大価値を置くべき事項を明確にし、従業員に繰り返し訴え続ける必要がある。自らも高い倫理観に基づき、具体的姿勢を示し続けなければならない」(武田氏)、「企業倫理確立は、仕組みをつくるだけでは難しい。心のあり方、持ち方を考えるべきであり、多様性を旨とする東洋の思想を参考にすべきである」(原田氏)、「法務・コンプライアンス部門の機能強化、社員意識調査によるシステム改善等具体的な取り組みが必要」(國廣氏)などの意見が示された。

【社会本部企業倫理担当】
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