日本経団連は7日、東京・大手町の経団連会館で、「世界共通特許に関する懇談会」を開催した。日本経団連では、かねてより、グローバルな事業活動を行っていくためには、特許制度の国ごとの違いをできる限りなくし、世界共通特許の実現をめざすべきとの主張を行ってきたところであり、米国において、先発明主義を、世界的に一般化している先願主義に移行させる法案が出されていることや、日米欧の政府、民間ベースで世界共通特許への道筋について活発に意見交換が進められていることから、世界共通特許に関する懇談会を開催した。
懇談会では、冒頭、日本経団連・産業技術委員会知的財産部会の加藤幹之部会長が、「懇談会を通じて、世界共通特許の必要性について共通認識を得、その実現に向けて新たな一歩の方向性を探りたい」とあいさつ。続いて、荒井寿光内閣官房知的財産戦略推進事務局長から、「世界共通特許実現の道筋として、日米の双方に出願された特許に関して、米国で特許が認められた場合、日本では、補充審査のみで特許権を与えるか否かを判断し、米国でも同様の扱いを行う特許FTAが必要である」旨の講演があった。
次に、米国のマイクロソフトのマーシャル・フェルプス知的財産担当バイスプレジデント兼副ゼネラルカウンセルが講演、「発明者は国境を越えて活動するものであり、制度の国際調和を特許庁間で図ることは大変重要である。米国では、先発明主義を先願主義に改める法案が出されているが、米国産業界はこの法案を支持している」旨を述べた。
続いて、日本知的財産協会の碓氷裕彦常務理事(デンソー知的財産部長)から、「日本知的財産協会の提案により、米国IPC、AIPLA、欧州UNICEと合同で、3極ユーザー会議を開催し、特許権の制度面、手続き面の国際調和のあり方について検討を行っている。手続き面については特に、まず出願に際してのフォーマットを統一すべきと主張しており、また、その具体案について検討中である」旨の講演があった。
その後、日本経団連産業技術委員会の澤井敬史知的財産部会部会長代行をコーディネーターとして、3名の講演者の参加を得て、「世界共通特許への期待」をテーマにパネルディスカッションを行った。
パネルディスカッションにおいては、荒井事務局長から出された特許FTAの考え方に対してフェルプス氏から、「日米でまず合意をして、それを広げていくことが重要である」との発言が、また碓氷氏からは、「修正実体審査を考えていく上では、出願人にとって負担が軽くなるよう運用していくことが大切である」との発言があった。さらに、フェルプス氏からは、「制度の統一にあたっては、製薬産業とIT産業といったような大きく意見の異なる業界間の調整をうまく行っていくことも重要である」との意見が出された。
最後に、加藤部会長から「国内制度は関係者の方々の努力によりずいぶん改善されてきた。これからは、知的財産の問題を、国際的な視点に立って考え、改革を進めていくことが重要である」とのあいさつがあった。