日本経団連の産業問題委員会エンターテインメント・コンテンツ関係者連携に関する懇談会(座長=岡村正副会長・産業問題委員長)は8月30日、東京・大手町の経団連会館で第4回会合を開催した。同会合では、ブロードバンドを利用した無料放送である「GyaO」を展開するUSENの宇野康秀社長と、音楽コンサート・舞台演劇・劇場での映画鑑賞・スポーツ観戦・テーマパークなどのライブ・エンターテインメントの振興に向けた調査研究を行っているぴあ総合研究所の波頭亮所長から、日本のエンターテインメント・コンテンツ産業における新たなビジネスモデル構築に向けた取り組みについて聴き、意見交換を行った。
宇野社長は、ブロードバンド利用世帯が2000万世帯まで普及した環境変化を捉え、今年4月に新しいビジネスモデルとして幅広いユーザーが手軽に楽しめる広告収入型のインターネット無料放送「GyaO」を開始したことを紹介し、事業開始後わずか1カ月でユーザー数が100万人を超えるなど新事業が順調に推移していることなどを強調した。
今後は、インターネット放送の特性を活かす形で、個々人の関心に応じたコンテンツや広告を提供するなど、既存の放送メディアを補完しつつ事業を展開していきたいと言及。将来的には「GyaO」を、インターネット放送の基本インフラとして位置づけ、映画館での上映やDVD販売、地上波放送等と並ぶコンテンツ流通のウィンドウとして位置づけられるよう努力していきたいとの意欲を示した。
続いて波頭所長が講演。日本の国民1人当たりライブ・エンターテインメント市場規模は、米国に次ぎ第2位であるものの、1人当たりの参加回数で比較すると、米国の7.95回に対して、日本は2.66回と極端に低い数字を示し、日本のライブ・エンターテインメント市場が今後も拡大していく可能性が高いことを指摘した。その上で、日本においても、欧米のように政府等による財政支援策が必要だとの考えを示した。
さらに、同分野における新たなビジネスモデル構築の事例として、(1)視聴環境の改善、複数スクリーンの保有による柔軟な対応を実現したシネマコンプレックス (2)魅力的なロングラン作品と専用劇場、独自の俳優育成システムを備えた劇団四季 (3)会場の収容人数の限界を解消したフジ・ロック・フェスティバル――などを紹介した。
同懇談会では今後、ワーキンググループを設置し、今後3〜5年のマーケット・ニーズの動向や国民のライフスタイルの変化を見据えつつ、新たなビジネスモデル構築のためのプラットフォーム整備に向けた課題について検討し、報告書をとりまとめることとしている。