日本経団連タイムス No.2782 (2005年9月8日)

「日米社会保障協定適用開始に向けた企業側の対応」/アメリカ委員会がセミナー開催

−KPMG LLP New York日本関連事業部税務パートナーの長谷川久美子氏が講演


日本経団連のアメリカ委員会(張富士夫委員長、鈴木邦雄共同委員長)は8月29日、東京・大手町の経団連会館で「日米社会保障協定適用開始に向けた企業側の対応」と題するセミナーを開催した。同セミナーではアメリカ委員会の本田敬吉企画部会長の開会あいさつに続き、KPMG LLP New York日本関連事業部税務パートナーの長谷川久美子氏が講演。このあと参加者と長谷川氏との間で質疑応答が行われた。

現在は、日本企業が社員を海外に派遣する場合、派遣元会社が派遣中の社員の日本の社会保険料を払い続けている。他方、米国に派遣されている日本人社員とその雇用主は義務として社会保障税を納めている。こうした二重払いのほかに、一般的に、派遣社員の米国駐在期間は米国で社会保障給付を受けられるだけの加入期間を満たさないため、多くの場合、米国で払った社会保障税は無駄になっている。また、米国から日本に派遣されているアメリカ人にも、同様の状況が発生している。
日米社会保障協定は、こうした二重払いや、受給資格失格の回避を可能とするもので、今年10月1日から発効する。同協定が発効すると、二重払いが回避されるとともに、相互制度加入期間の通算によって受給資格失格も回避できることとなる。すなわち、米国に派遣された日本人が一定の条件を満たせば、米国の社会保障税の支払いを免除されることになり、日本企業は人件費を大きく削減できる。また、両国の保険加入期間通算が可能になることによって、一方の国、または両国において受給権を得ることが現在より容易になる。

長谷川氏は、保険料二重払い回避に関する規定(原則・例外)や、二重払いが回避された場合の税負担の軽減の試算、米国社会保障税免除のための手続き、さらに米国の年金の種類、老齢年金受給対象者、老齢年金受給開始年齢、老齢年金受給申請手続き、年金受取額の一般例、家族年金の仕組み・受給申請方法・申請時期、遺族年金の仕組み・受給申請方法などについて詳細な解説を行った。
このうち二重払いの回避のための規定については、(1)原則としては、派遣先の社会保障制度のみに加入するため、米国で就労する日本人駐在員は日本の社会保障制度を離れ、米国の制度に加入する(Old-Age, Survivor, and Disability Insuranceとメディケア税のみ納付) (2)ただし、「一時派遣者の例外規定」があり、5年以内の一時的派遣の場合のみ、就労地(米国)での社会保障税が免除される(日本の厚生年金保険料と健康保険料のみ納付)――となっていることを説明した。

解説後に行われた質疑応答では、同協定によって企業にどのような責任が発生するかなどの質問が寄せられた。

【国際経済本部北米・オセアニア担当】
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