日本経団連タイムス No.2780 (2005年8月25日)

少子化対策委が企画部会と合同会合

−小峰・法政大学大学院教授が講演/少子化対策の基本方向提示


日本経団連の少子化対策委員会(茂木賢三郎委員長)は4日、東京・大手町の経団連会館において同委員会の下部組織である企画部会との合同会合を開催した。合同会合では、法政大学大学院の小峰隆夫教授を招き、「少子化、人口減少に伴うわが国経済や社会の行方、その対応について」と題する講演を聴取した後、同委員会の今年度の具体的な検討項目について意見交換を行った。

小峰氏は講演の中で、「90年代以降の日本経済を見ると、(1)少子化の進行 (2)低水準の対内直接投資 (3)異常なISバランス――という3点に異常値が表れている。これらは、国の基礎的な活力ともいえる日本の総合国力の低下や、日本の従来型システムが環境と不適合を起こしていることが大きな原因ではないか」と分析。「市民生活向上力、経済価値創造力、国際社会対応力で総合活力を考えると、これからはハードの力ではなく、人的資源の質、環境、先端技術力、情報力、ネットワークといったソフトの力が重要になってくる」との見解を示した。
また、人口減少と総合活力との関係については、「人口減少は総合国力を低下させ、総合国力の低下が将来不安を呼び、さらなる少子化になるという悪循環に陥る」とし、「子育て機会費用の増大、現行の諸制度と環境の不適合、いったん退職した後の(雇用市場)再参入の困難さや男性が家事に参画しにくい日本型雇用慣行が人口減少の背景となっている」と指摘した。
その上で小峰氏は、少子化対策の基本方向として、(1)多様な雇用の場の確保 (2)真に勤労者、生活者の立場に立った仕組みづくり (3)時代にふさわしい雇用システム・社会システム・家族形態・子育ての実現――を挙げ、講演を締めくくった。

今年度の具体的な検討項目についての意見交換に先立ち、事務局が、政府や経済団体、シンクタンク等がこれまでに発表した少子化に関する主な提言を報告。続いて茂木委員長から、(1)少子化への対応についてどのようなアプローチをとるのがいいのか (2)対策を考える際にどのような方法論を用いればいいのか――を説明し、意見交換に移った。
この日の合同会合だけでは意見が出し切れないことから、各委員が後日、書面で意見を出し合い、次回の会合で検討項目を決定することとなった。次回は31日に開催の予定。

【国民生活本部国民生活担当】
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