厚生労働省の中央最低賃金審議会(会長=今野浩一郎・学習院大学教授)は7月26日、2005年度の地域別最低賃金額改定の目安について、全国の都道府県をA〜Dの4つのランクに分け、引き上げ額を「A・B・Cランク3円、Dランク2円」とする公益委員見解を地方最低賃金審議会に提示するとの答申を厚生労働大臣に行った。今回の目安答申を踏まえ、各地方最低賃金審議会は、地域の経済実態に即した改定審議を行い、8月中にはすべての都道府県で今年度の地域別最低賃金額が決定する。
今年度の目安を審議する「目安に関する小委員会」(目安小委員会)において、使用者側はまず、日本の景気について、緩やかに回復し踊り場から脱却しつつあるとされているものの、地域間や業種間、企業規模間で景況感に大きな温度差があることを、各種調査結果を引きながら主張。その上で、目安審議の参考資料である賃金改定状況調査の賃金上昇率の全平均は0.4%であるが、ランク別では0.0〜0.6%まで大きなばらつきがあるだけでなく、製造業平均が0.0%であることも重く受け止めるべきであるとの見解を示した。
さらに、賃金改定を実施しない事業所の割合が4年連続して50%超であることや、大手企業の初任給のアップ率が03年以降ほぼゼロであることなどを指摘、今年度の目安はゼロとすべきであると結論付けた。
一方、労働者側は、景気は着実に回復を続けているとした上で、全国加重平均665円である現在の最低賃金時間額は、生計費や実勢賃金と比べて低すぎると述べ、最低生計費を満たすに足る最低賃金水準をめざして、明確な水準の改善に結びつく目安を提示すべきであると主張した。
長時間審議したが労使の意見の隔たりは大きく、双方合意の目安を定めるには至らなかったため、目安小委員会は、引き上げ額を「A・B・Cランク3円、Dランク2円」とする公益委員見解を、地方最低賃金審議会に提示するよう中央最低賃金審議会に報告した。
今年度の目安にあたって日本経団連は、同審議会に推薦している使用者側委員を中心に対応したほか、労使関係委員会や、地方経営者協会の最低賃金担当者が参集する「最低賃金対策専門委員会」、全国の地方最低賃金審議会の全使用者側委員が参集する「最低賃金審議会使用者側委員全国連絡会議」などを開催し、目安小委員会での使用者側委員の対応や審議状況・結果を協議・報告した。
今後の最低賃金制度のあり方などを議論する、厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会「最低賃金部会」(部会長=今野浩一郎・学習院大学教授)の第2回会合が3日開かれた。今回の会合では、現行の (1)産業別最低賃金 (2)労働協約拡張方式に基づく最低賃金 (3)地域別最低賃金――について、労使が見解を表明した。
使用者側は、(1)すべての労働者を対象に地域別最低賃金が設定され機能していることから産業別最低賃金を別途設定している必要性は認められず廃止すべき、(2)労働協約拡張方式に基づく最低賃金は現在2件・適用労働者数500名程度で実効性や影響が軽微であることから廃止してもよいのではないか、(3)地域別最低賃金は各都道府県の地方最低賃金審議会で公労使三者が地域の特性や実態に即して決定しており、「公労使の知恵の積み上げ」である現行制度を維持すべき――と主張した。
一方、労働者側は、(1)地域別と産業別の2つがあることによって最低賃金制度が機能していることから産業別最低賃金は機能強化を図るべき、(2)労働協約拡張方式に基づく最低賃金は大事にすべき制度である、(3)地域別最低賃金は公労使の三者で決定しうまく機能しているがその水準が低すぎる――との意見を述べた。
9月中旬に開催予定の第3回会合では、産業別最低賃金を中心に議論する。
日本経団連としては、労使関係委員会や最賃対策専門委員会などと連携し、必要に応じて同部会の使用者側委員などを通じて、経済界の意見反映に努めることとしている。