日本経団連タイムス No.2779 (2005年8月11日)

第231回産業労働懇話会開く

−産業安全問題で意見交換


厚生労働大臣の私的懇談会である産業労働懇話会の第231回会合が3日、都内で開催された。会合には、厚生労働省から尾辻秀久大臣をはじめ西博義副大臣ら幹部が、経営側から奥田碩日本経団連会長、山口信夫日商会頭、佐伯昭雄全国中小企業団体中央会会長ら、労働側から笹森清連合会長、人見一夫連合会長代行ら、学識側から宮崎勇大和総研名誉顧問らが出席した。

会議の冒頭、尾辻厚労相があいさつに立ち、日本における労働災害が長期的に減少傾向にある中で、一度に3人以上が被災する重大災害は増加傾向にあり、2004年は1985年の2倍近い件数に及び、今年に入っても減少を見ない状況にあることについて、「このような状況は、まことに遺憾に堪えないものであり、人命尊重の立場からも、わが国産業の健全な発展の観点からも看過し得ないものである」と述べた。

そして、一昨年秋の爆発・火災による重大災害の多発、今年4月の列車脱線事故など、依然として重大災害が相次いでいる状況について、「各企業のトップは、企業間競争が激化し、コスト削減が進められる中にあっても、労働者の安全と健康の確保が何よりも大切であることを、改めて認識し、労働災害の防止に取り組む必要がある。労働者の安全と健康の確保はいかなる状況にあっても企業活動において最優先すべき事項である。こうした認識の下で、経営トップ自らの率先垂範による安全衛生方針の周知徹底と、労使一丸となった実効ある取り組みによる『労働者の安全と健康を最優先する企業文化』の確立をお願いする」と述べた。

さらに、石綿による健康障害問題についても言及し、「厚生労働省の当面の対応として、(1)建築物の解体作業における石綿ばく露防止措置の徹底、(2)例外的に用いられている石綿含有製品の早期代替化について、遅くとも08年までとしている全面禁止の前倒しも含めた検討、(3)保健所、労災病院等における健康相談窓口の開設、(4)国立がんセンター等による、中皮腫の早期検診や治療方法等に関する研究――等を行うこととしている。今後とも、これらの施策を推進するとともに、関係省庁との連携を密にして、被害の拡大防止や国民不安の解消に向け、スピード感を持って全力で取り組んでいく」ことを強調した。

その後意見交換が行われ、奥田日本経団連会長は、産業安全対策について、「大規模事業場における爆発・火災事故、列車脱線事故等の産業事故が相次いで発生したことは、経営者側としてまことに残念である。これら産業事故の背景・要因の1つとして、わが国の安全神話への慣れ、驕りがあるのではないかと思う。こうした日本全体の風潮に対して、経営者側として危機感を持っている。産業界としては、危機意識を持って、産業事故の防止と撲滅に向けて、経営トップ自らが先頭に立ち、安全衛生方針を表明して『安全第一主義』を徹底することが大切であり、万全の保安体制の確保と強化を図っていく」とした上で、「経営者は自ら現場に足を運んで、現地現物を体感して行動することが一番大事である。従業員の汗、体力の消耗などを実感した上で、労働災害防止対策等を講じるよう徹底していきたい」と強調した。また、石綿による健康障害問題については、「官だけでなく、国全体の問題として取り組んでいく必要がある」と述べた。

【労働法制本部安全・衛生担当】
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