日本経団連(奥田碩会長)は6月30日、東京・大手町の経団連会館において少子化対策委員会(茂木賢三郎委員長)の初会合を開催した。同会合には、委員約120名が出席し、政策研究大学院大学の松谷明彦教授から、「人口減少時代におけるわが国の社会・経済」と題する講演を聴取。その後、同委員会の活動方針や検討内容、開催スケジュール、また同委員会の下部組織として企画部会(上坂清部会長)を設置することを諮り、承認された。
会合冒頭にあいさつした茂木委員長は、同委員会の設置に関して、「合計特殊出生率も下げ止まらない日本の少子化の進行を、経済界としてどのように考えていくのか、早急に検討すべき重要課題」と述べるとともに、最近の政府の動向も踏まえて、さまざまな観点から、少子化問題・対策を検討していく意向を示した。
続いて、松谷明彦・政策研究大学院大学教授が基調講演を行った。講演の中で松谷氏は、「今後の労働力人口の急激な減少は、日本特有の人口構造の必然的な結果である。また、出生率の低下は長期的な傾向にあり、少子化対策に多くを期待することはできない」と指摘。
その上で、「人口の減少、および労働力人口の減少を前提にした社会・経済システムへの転換が必要」と述べ、少子化に伴う人口減少や労働力の高齢化の観点からの見解を示した。
講演終了後、同委員会の設置趣旨や委員会の進め方などについて、検討テーマ例などを挙げながら、事務局が説明を行った。
少子化問題については、人口減少社会への対応、個々人の意識の問題、教育、税制、経済的支援、雇用対策、保育サービス、企業や地域における支援――など、想定される検討テーマが多岐にわたることから、委員会で決定したテーマを具体的に検討する下部組織として、企画部会を設置することを提示、承認された。また、部会長には上坂清・日本電信電話取締役第一部門長が就任した。
今後のスケジュールとしては、委員会と企画部会の合同会合を今秋頃までに数回程度開催し、委員間で認識を合致させながら、今年度の検討テーマを絞り込むこととなったほか、絞り込んだ検討テーマについては、今年度末をめどにとりまとめを行うこととなった。
ただし、テーマによっては、関係する他の項目の内容ともあわせて幅広い検討を行うことが必要となるため、その場合には、次年度以降も引き続き検討し、とりまとめ作業を行っていくことが決まった。
同委員会は、5月26日に開催した日本経団連定時総会において新設することが発表されたもの。今回開催した第1回の会合における同委員会登録委員数は144名となっている。