日本経団連(奥田碩会長)は21日、「国際観光立国に関する提言」を発表した。現在、政府が観光立国に向けた政策を具体化する段階にあることから、日本経団連では国際観光立国、特に訪日外国人旅行者の増大に向けた諸課題をあらためて包括的に整理し、政府や地方自治体、経済界が優先的に取り組むべき課題をとりまとめた。同提言について記者会見を行った江頭邦雄観光委員長は、国際観光立国の意義について、「国内外から観光客を誘致することは、活気ある街づくり、景観の整備、都市再生など、自分達が普段生活している空間を魅力的にする契機となる」と指摘。さらに訪日外国人旅行者を増大させるためには、日本が持つ強みや特徴を活かすとともに、そのイメージを戦略的に推進すべきであると述べ、(1)伝統とハイテク(2)四季と食文化(3)安全・安心ともてなし――の3点を日本のイメージとして対外的に定着させる必要があると訴えた。同提言は今後、政府・与党をはじめ関係各方面に建議するとともに、経済界としても提言事項に対して具体的なアクションを起こしていく意向。概要は次のとおり。
訪日外国人を増やす観点から、ビザ発給手続きの簡素化や透明化、出入国手続きを簡素化(韓国、台湾への商用・観光ビザ免除の恒久化等含む)する。さらに、ビジネス客誘致の基盤整備を念頭に、国内投資環境の整備や企業内転勤等、外国人の在留資格の範囲拡大を図る。
訪日外国人旅行者に対し、満足感を感じさせることのできる魅力のある国にするため、次の取り組みを推進すべきである。
地域発の魅力開発(都市生活、食文化等)に向けた総合的プロデューサーの育成を促進する。
伝統的な建造物の保存にとどまらず、これらを含む街全体の景観に配慮した美しい空間の形成を推進する。自治体は、「景観法」を活用するなど、イニシアチブをもって魅力的で活気のある街づくりをめざす。
空港の容量拡大や、ホテル・医療サービス等の充実といった基礎的なインフラの整備を図る。
現在、各地域が別々に実施している観光統計を統一する。
ユビキタスを活用したシステム開発は、関係省庁間で緊密な連携を取りつつ、民間企業の創意を観光立国政策に反映させ、財政面でも支援を行うことが望まれる。また、観光客のみならず地域住民も利用できるユニバーサルサービスの実現に向けたスキームを構築する。
「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の重点地域拡大、宣伝方法の高度化などを官民連携により体系的に推進する。
経済界、政府等が連携して国際会議を企画・誘致し、日本が国際社会で積極的な役割を果たす姿勢を示す。
アニメ・ロボット展覧会の開催や、映画・ドラマのロケ地の活用など、観光とエンターテイメントとの連携を推進する。また、ライブ・エンターテイメントの拠点づくりに向けた環境整備を通じて集客の拡大を図る。これらを実現すべく政府は種々の規制緩和を行うほか、必要な財政的支援措置を講ずることを求める。
観光客のニーズに応じたターゲットの設定、戦略の構築を行う。例えば産業観光については、海外の経済界、関係者等を招聘し、商談につなげるといった戦略が必要である。