日本経団連と映像産業振興機構(VIPO、迫本淳一理事長)は、映像コンテンツ産業の人材育成を進めることを目的に、九州大学などと連携し、産学連携によりコンテンツ・クリエーターを育成していくことを発表した。
会見の中で、九州大学大学院の源田悦夫教授は、日本のコンテンツ戦略の基盤となるエンターテインメントを科学的視点でとらえることができ、芸術的感性と論理的思考能力を持った人材の育成が産業界から要望されていると指摘。CGなどの分野において、米国に大きく差をつけられている現状に対し、同事業を「追従からの脱却」と位置づけ、世界的なレベルで活躍できるクリエーターを育成していく意向を明らかにした。
具体的には、同大学大学院芸術工学研究院の視覚芸術学講座や、メディア設計学、音文化学などを中心とした特別教育プログラムを設け、デジタルグラフィックス、アニメといったメディアアートやその表現の基盤となる数理的な基礎力、プログラミング能力、科学的基礎解析力など、論理的思考能力と高度な芸術的表現力を兼ね備えるコンテンツ・クリエーターの育成に向け、集中的な教育を行うと説明した。また講師は、他の大学や産業界からも参画し、その研究領域の第一人者が担当するほか、5年後には、修士課程で40人以上、博士課程で6人以上を育成し、産業界に人材を供給することを目標に挙げていると述べた。
同事業は、政府の2005年度科学技術振興調整費「振興分野人材養成」プログラムにおける実施課題とされており、文部科学省から年間1億円弱を、5年間にわたり助成されることが決まった。事業は、九州大学を核とする教育機関のほか、日本経団連や九州・山口経済連合会をはじめとする経済界、また地元自治体なども加わり、大規模な産学官連携で遂行する。さらに、同プログラムの教育・研究過程で生まれた作品の著作権などを活用したビジネスを実践し、その利益を教育に還元していくことを目的に設立した、学内ベンチャー「九州デジタルアートアンドイメージ(仮称)」についても、全面的にサポートしていく意向。また、同事業が九州をベースにすることについて日本経団連事務局は、「九州にはIT先端分野の知的ノウハウが集積していることに加え、アジア諸国への今後の展開も容易」と説明した。