日本経団連タイムス No.2765 (2005年4月28日)

フリスチェンコ・ロシア産業エネルギー大臣と意見交換

−透明で公正な事業環境をロシア側に要請


日本経団連は21日、東京・大手町の経団連会館で、ロシア連邦のフリスチェンコ産業エネルギー大臣との懇談会を開催した。
懇談会には、ロシア側からフリスチェンコ大臣のほか、ダニロヴァ経済発展商務省対外経済関係局長、ロシュコフ駐日ロシア連邦特命全権大使、ダリキン沿海州知事らが、日本経団連側から安西邦夫日本ロシア経済委員長らが出席した。

冒頭にあいさつした安西委員長は、「現在の日ロ経済関係は基本的には極めて良好であり、日ロビジネス拡大の気運が高まっている」との認識を示す一方で、日本企業が安心して対ロシアビジネスを進められるように、「透明で公正な事業環境を整備してほしい」とロシア側に要請した。

フリスチェンコ・産業エネルギー相、両国間貿易拡大に意欲

続いてフリスチェンコ大臣が、ロシア経済の現状や日ロの経済貿易関係の状況、ビジネス環境改善に向けたロシア国内の動きなどについて説明した。大臣はまず、ロシア経済の現状を「着実な経済成長を示すようになって5年目に入った」と評価。今年のGDPの伸びが政府予測では6.3%に達するとみられることや、工業生産の伸び率の昨年実績が6%台であったこと、外貨準備高が1230億ドル相当に達したこと、財政黒字がGDPの4%に相当すること、昨年の投資需要の伸びが10.8%であり、消費需要の伸びが11.3%であったことなどを挙げ、「わが国のマクロ経済の指標は、予測可能で、安定し、着実なものとなった」と述べた。
一方で、ロシア経済の問題点として、インフレを指摘した。

日ロの貿易経済関係の状況について大臣は、昨年の両国の貿易額が90億ドル台にのぼったことに言及し、「記録的な年であり、両国にとってプラスであった」としながらも、「(この額は)両国経済の潜在的な力に見合ったものとはいえない。貿易額がもう1桁上がることを期待したい」と述べ、両国間貿易の一層の拡大に意欲を示した。また、両国間貿易経済関係の昨年の特徴として、(1)日本からロシアへの輸出の伸びがロシアから日本への輸出の伸びに比べ約2倍にのぼった (2)日本からロシアへの輸出品目は、ロシアにおける設備投資拡大などを反映し、機械設備関連のものが多い (3)ロシアから日本への主要輸出品目は原料資源関係、すなわち木材や水産物、非鉄金属、貴金属、石油製品、石炭などであった (4)そのうち石油製品や石炭などエネルギー関係品目の日本への輸出が増加した (5)日本からの投資には目立った変化がなく、日本のロシアに対する投資金額・数量や、ロシアへの投資国中に占める日本のウエートはかなり低い――などの諸点を挙げた。
このうち、ロシアへの投資協力問題について大臣は、有望な投資対象のひとつとしてサハリンの大陸棚プロジェクトを挙げ、成功裡に進んでいる同プロジェクトが、日本からの投資協力拡大のポテンシャルを持っていることを強調。日本経済界とロシア行政当局・ロシア経済界が連携を密にし、投資協力の拡大を図ってほしいと述べた。

さらに、ロシアの乗用車市場が極めて速いテンポで伸びを示していることを指摘、有望な新しい投資先として自動車産業を挙げ、ロシア国内で乗用車を製造するプロジェクトについて概要を説明した上で、日本からの投資に対して期待感を示した。
ビジネス環境改善に向けたロシアの動きについて大臣は、「最近は、ビジネスや会社、税に関する法律に大きな、前向きな変化が起きている。また現在、司法改革、行政改革も行われている」と述べた。
ロシアのWTOへの加盟問題について大臣は、日本との2国間協議では、「関税やサービスなどの事項については今後も継続的に話し合っていかなければならないが、実質的に交渉は完了している」との認識を示した。

続く意見交換では、日本側からラインパイプ(油・ガスなどを運ぶための大直径の鉄パイプ)について、ロシアでセーフガード(緊急輸入制限)発動を視野に入れた審査が始まったこと、東シベリア・太平洋パイプラインプロジェクトへの日本の協力の可能性、サハリン開発プロジェクトの状況、ロシア国内に設置が検討されているIT特別区などについて質問や意見が示された。

これに対してフリスチェンコ大臣は、改めて、ロシアの商法や税法、司法制度の改革が実を結びつつあり、民間企業が事業を行いやすい環境整備が進んでいることを強調した。その上で、セーフガードや東シベリア・太平洋パイプライン、サハリンプロジェクトなどでも民間の考えに留意していく政府方針を詳細に説明し、日ロビジネス拡大に引き続き尽力する決意を表明した。

【国際経済本部欧州・ロシア担当】
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