日本経団連タイムス No.2763 (2005年4月14日)

イランのシャリアトマダリ商業大臣が懇談会で講演

−「イラン経済の現状と日本・イラン2国間の経済関係の一層の発展について」


日本経団連は3月29日、都内のホテルでイラン・イスラム共和国のモハンマド・シャリアトマダリ商業大臣との懇談会を開催した。イランからはシャリアトマダリ商業大臣のほかモーセン・タライ駐日大使らが、日本経団連からは武重勇蔵・日本イラン経済委員会企画部会長らが出席した。

席上、シャリアトマダリ商業大臣は、「イラン経済の現状と日本・イラン2国間の経済関係の一層の発展について」と題し、講演を行った。商業大臣はまず、これまで日本経団連が、数回にわたってイランにミッションを派遣したことに触れ、「そのたびに、日本とイラン両国の経済関係の拡大に寄与してきた」と謝意を表明した。また、2000年秋にハタミ大統領が来日したことについては、「これが新たな両国協力の出発点となり、アザデガン油田の開発などが開始された」と述べた。
商業大臣は、ラフサンジャニ前大統領の時代を振り返り、同時代はイランの復興期であり、その間にイランのインフラの多くが再建・改善されたことを指摘、「その後のイランの本格的な経済開発の土台となった」と評価した。ハタミ大統領の政策については、「経済構造改革を実施し、かなりのスピードで経済改革を進めている」と述べ、今後20年間のイランの経済状況を決定する第4次5カ年計画によって、イラン経済を世界経済に統合していく考えであることを示した。

経済構造改革については、「要諦は法律の改正であり、中でも税法改正が最も重要である」とし、税率を25%に下げ、国内外の企業に等しく適用することを明らかにした。このほか、経済構造改革について、(1)外資を誘致し支援する法律によって、外資系企業はその日の為替レートでイランから利益を送金できるようになった (2)自由経済に円滑に移行するために、輸出入法を制定した (3)イランはこれまで、さまざまな製品に高額な輸入税を課してきたが、徐々に撤廃している――と説明、「税制改正によってイランは大きな税収を失ったが、外資の協力はそれよりも一層重要である」との基本姿勢を述べた。
さらには、為替レートを一本化したことで、イラン経済が世界経済と歩調を合わせることができたこと、民間の銀行や保険会社を設立するとともに、小さな政府をつくり、政府の経済への関与をできるだけ減らそうと努力していること、また、さまざまな独占法を廃止し、鉄道や航空、麦、砂糖、タバコを独占の対象外としたことなどを紹介した。

石油安定化基金に関して商業大臣は、これを有効活用することで、100億ドルの資金がイランの民間部門の活性化に充当されたことを紹介。同基金は民間部門だけが利用でき、政府は使えないことや、製造業にのみ適用され、ジョイントベンチャーなど世界有数の大企業に優先的に充当されることを説明した。

日本とイランの間の経済協力については、現状、拡大はしているが、日本のイランへの直接投資を期待していると述べ、日本にとって東アジアや東南アジアが優先投資地域であることに理解を示しつつも、石油や天然ガス、鉄鋼などの戦略部門について、もう一歩踏み込んだ協力を行いたい意向を示した。さらに、03年の日本の外国直接投資は350億ドルだが、イラン向けはゼロであることを挙げ、「モリブデン、クロム以外の鉱物も豊富であり、日本が参入できる分野は多い。国際的な日本企業に対イラン直接投資を期待する」との要請を行った。
また、イランの非石油産品の対日輸出が、数年前の9000万ドルから、2600万ドルに減少したことを指摘。問題を解決するためには、日本企業がJETROなどと協力して、より詳しくイラン市場を調査するとともに、イラン経済の現状を直接見ることが必要であるとした上で、「日本は全輸入量の10%にあたる約410億ドルの食糧を輸入しているにもかかわらず、イランからはほぼゼロであり、改善の余地がある」と語った。

【国際協力本部中南米・中東・アフリカ担当】
Copyright © Nippon Keidanren