日本経団連の日本・香港経済委員会(兼子勲委員長)と香港・日本経済委員会(ビクター・ファン委員長)は1月28日、東京・大手町の経団連会館で、「第27回日本・香港経済合同委員会」を開催した。
同委員会には、香港・日本経済委員会の新委員長となったファン・利豊有限公司会長や、チャン・ウィン・キー・長江製衣廠有限公司取締役、フィリップ・チェン・キャセイパシフィック航空CEOら20名の香港側代表団など、日港あわせて80名が出席。中国ビジネスにおける日港の新たな協力や、CEPA(香港と中国本土との経済貿易緊密化協定)注1の活用状況・問題点などについて意見交換を行った。
この中で香港側は、日本企業が中国ビジネスを行う際、特に中国の金融や物流、開発分野に関する知識やノウハウをもつ香港と協力することによって、日本―香港―中国の経済連携を強化すべきことを強調した。
日本側は、施行から1年が経過したCEPAに関して、香港に拠点を持つ外資系企業が、CEPAのメリットである、中国のWTO加盟約束の履行に先立つ先行者利益を、継続して享受できるようにしてほしいと要望した。これを受けて香港側は、今年1月から中港連携強化の第2段階であるCEPAⅡが施行され、新たに713品目がゼロ関税対象となったことや、自由化される業種も18から26に拡大したことを説明した。
また、日本側は、CEPAを利用して、日本企業が香港特別行政府から香港企業としての認可を受けても、中国で実際に事業展開する際に、諸手続きが円滑に進まないケースがあるといった点を指摘。その上で兼子委員長は、香港に対し、中国政府に改善を促してほしいと要請した。
なお、委員会前日の1月27日には、香港側主催による夕食レセプションが都内で行われた。来賓としてあいさつした兼子委員長は、今年9月に香港ディズニーランドが開園予定であることに触れ、「これが契機となって、日本と香港の交流がさらに促進されることを期待している」と語った。
香港経済は、アジア通貨危機や一昨年のSARS騒動の影響で一時停滞していたが、CEPAの締結や汎珠江デルタ構想注2の推進などにより、中国本土との連携を強化し、本格的に回復している。すでに中港連携強化の第3段階であるCEPAIIIの検討も始まっている。CEPAIIIは、これまでの香港から中国本土への経済的な流れに加えて、中国本土から香港に対する貿易投資の促進が主な内容となる見込み。中国には、香港株式市場に上場したり、香港を介して日本はじめ海外へ進出しようとしている企業が多い。香港は今後、中国企業が東南アジア諸国へ進出する際の玄関口となることを期待されている。
香港が、1997年に中国へ返還されてから8年が経過した。中国のWTO加盟によって、一時は中国へのゲートウェイとしての香港の地位低下を懸念する声もあったが、香港の優位性は依然として高い。今後は、香港を活用した中国企業による事業展開の動きや、東アジア経済圏における香港の役割が注目される。
注1 CEPA=2003年6月、香港と中国本土との経済連携を強化することを目的に、香港特別行政区と中国中央政府との間で締結された経済貿易緊密化協定(Closer Economic Partnership Arrangement)のこと。香港企業は中国のWTO加盟約束の履行に先立ち、先行者利益を得ることができる。04年1月より施行され、香港製品374品目に対する関税が撤廃されたほか、サービス分野18業種において香港企業に中国市場が開放された。今年1月からは、第2段階となるCEPAIIが施行され、新たに713品目がゼロ関税となり、サービス分野8業種が中国市場開放の対象として追加された。
注2 汎珠江デルタ構想=広東や福建、江西、湖南、広西、海南、四川、雲南、貴州の9省・自治区と香港、マカオの2特別行政区における経済連携の強化をめざし、03年7月に黄華華広東省長が提唱した構想。通称「9プラス2」とも呼ばれる。同地域は、面積約200万平方キロ(日本の約5倍)、人口約4億5000万人、GDP約6300億ドル(香港、マカオを含む中国圏の約4割)の一大経済圏である。