日本経団連タイムス No.2749 (2004年12月9日)

新産業・新事業委員会開く

−健康福祉産業振興への経産省の取り組み聴取


日本経団連の新産業・新事業委員会(高原慶一朗委員長、原良也共同委員長)は11月24日、東京・大手町の経団連会館において会合を開催し、経済産業省商務情報政策局局長の豊田正和氏、同局サービス産業課長の橋本正洋氏から同省の「健康・福祉関連産業施策」について説明を聴取後、意見交換を行った。

豊田局長はまず、「サービス産業は、制度や慣行の影響で事業革新が停滞し、業態の確立していない新たなビジネスも存在する一方、サービス消費の拡大など、サービス経済化が進展している」と指摘。特に、医療・介護・福祉などのヘルスケア分野は、高齢化が進む中で、市場の大きな伸びが期待できるとして、2001年に12兆円だった健康サービス産業の市場規模は、10年には20兆円となり、また、それに伴い、雇用者数も200万人から300万人に増加する試算ができると説明した。
さらに、10年までの9年間に、健康増進活動等の推進で医療費は4兆円の削減ができるとの期待を述べるとともに、中川昭一経済産業大臣のイニシアチブでとりまとめた「新産業創造戦略」の中にも、健康福祉産業の振興が戦略7分野の1つとして位置付けられていることを紹介した。

また、同省は健康福祉産業の振興に向けて、(1)医療情報のIT化の促進 (2)規制のマイナス面を排除した医療機器開発ガイドラインの整備 (3)サービス産業創出支援事業の推進(05年度予算の概算要求で32億円を計上)――などに取り組んでいると説明。このうち、サービス産業創出支援事業については、地域や事業者ネットワークにおける先導的な取り組みを支援し、新たな「オンリーワン」のビジネスモデル確立を促進することを目的とするもので、今年度は特に健康サービス分野に絞って実施したと述べた。具体的には、根拠に基づく健康増進(EBH:evidence-based healthcare)の確保につながる情報基盤の整備や人材育成、研究分析などに要する経費に対して、重点的に支援を行ったことを明らかにした。

一方、健康サービス産業創出にあたっては、消費者自身が「時間」を割き、運動するなどの「肉体的負荷」も必要な上に、すぐに結果が出るとは限らないため、「飽きられやすい」「信頼性が低い」といった障害があることを指摘。それを克服するための対応として、(1)継続に向けた工夫 (2)サービスの多様化 (3)EBHの徹底 (4)信頼性のある提供窓口の確保――などをあげた。
また、医療・介護サービスと異なり、最終消費者が全額費用負担をしなければならないといった課題に対しては、事業者の収入源の多様化や民間保険、地域通貨等の活用が考えられるとの見解を示した。
最後に、NPО法人「健康サービス産業振興機構」が、04年度中に設立されることについて豊田局長は、「健康サービス産業振興の民間推進母体として、経済産業省としても最大限の期待をしたい」と語った。

説明聴取後には活発な意見交換が行われ、「『医療の情報化』をどのように加速させていくのか」との委員からの問いに対し、経済産業省側は、「インセンティブを制度的に明確化することが必要」との認識を示した。

【産業本部産業基盤担当】
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