国際労働機関(ILO)の第291回理事会が11月8〜18日の日程で、ジュネーブで開催された。今回の理事会では主として、2006〜7年の予算編成をにらんで、その基礎となる06〜09年の事業戦略政策の枠組みについて議論を行った。
ILO事務局が提出した政策枠組み案の背景には、2月に発表された「グローバル化の社会的側面に関する世界委員会報告」が示した「ディーセントワークをグローバルな目標にしよう」という主張への強い意識がある。加盟国における雇用創出や労働条件の向上への技術協力といったILOの従来の事業に加え、世界委員会報告に盛り込まれた公正なグローバル化のための国際機関間の政策協調に向けた活動が強調されている。
これに対して使用者側や先進諸国は、世界委員会報告が示した勧告のいずれをILOがとりあげるかを決定する権限は理事会にあることや、厳しい財政状況にある今日、ILOの本来の役割をまず優先すべきであると主張した。こうした議論を踏まえた上で、来年3月開催の次回理事会に06〜07年の予算案を提出することとなった。
また、今回の理事会では、長年にわたって強制労働が問題となっているミャンマーに関する議論も行われた。6月のILO総会では、ILOとの接触等を理由にミャンマー人に死刑判決が出されたことが問題となったが、その後、ILOとの接触は違法ではないことを裁判所が明示し、減刑されたことが報告された。その上で理事会は、最近の政権内での人事の動きを踏まえ、強制労働問題解決に向けての政府の姿勢を確認する目的で、ハイレベル・ミッションを派遣することを決定。同ミッションの報告を基に、次回の理事会で、ILOとしてさらなる措置が必要かどうかを検討することとしている。
多国籍企業に関するサブコミティでは、ILOにおけるCSR(企業の社会的責任)関係の活動は、1977年の「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」を中心に展開することを確認した。
また、国際標準化機構(ISO)で現在進んでいるSR(社会的責任)の規格づくりについては、労働分野でのILOの役割を尊重することが前提条件として付されていたが、ILOとISOの両機関間の覚書締結を待たずにISOにおける作業が進んでいることに対し、ILOとして警鐘を鳴らすことを決定した。