日本経団連は11月11、12日の両日、静岡・小山町の経団連ゲストハウスで、個人情報保護法全面施行に向けた企業の体制整備促進を目的に、「第126回経団連ゲストハウス・フォーラム」を開催した。
来年4月1日に全面施行される「個人情報の保護に関する法律」(個人情報保護法)は、個人情報の取り扱いに関して共通する最小限のルールを定めるとともに、個人情報取扱事業者が事業の特性等に応じて、自律的に個人情報の保護に取り組むことを求めており、企業等が実際に体制整備に取り組む際に、不明な点や判断に迷う点が多々あると指摘されている。
こうしたことから今回のフォーラムでは、個人情報保護法に関する会員企業・団体の理解を深め、情報共有を図ることを目的に、約40名の参加を得て、関係官庁や弁護士、先進的に取り組みを進めている企業から、説明を聴取した。
まず、経済産業省情報経済課の鳥丸忠彦課長補佐が、10月に告示された「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」を説明。その中で鳥丸課長補佐は、同ガイドラインは、経済産業省所管の事業者等が個人情報の適正な取り扱いを確保するために行う取り組みを支援するための具体的指針であり、企業の自主的な取り組みが重要であることを強調した。
また、厚生労働省労働政策担当参事官室の千葉登志雄室長補佐は、7月に告示された「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針」に関する説明の中で、「雇用関係の多様化や終身雇用制の崩壊によって、従業員の個人情報については今後、管理責任が厳しく問われるだろう」と指摘した。
次に、企業側の体制整備に関連して、横山経通弁護士が、取得した個人情報の利用目的の特定方法や、契約書の書式、保有個人データの開示請求への対応を説明。特に、個人データの安全管理措置や第3者提供の制限については、「不法行為責任を問われる可能性があるので、個人情報保護法の全面施行前から適切に取り組む必要がある」とのアドバイスを行った。
続いて、企業の対応状況について、3社が事例説明を行った。その中で、セキュリティを強化するほど業務が困難になるというジレンマに対しては、「個人情報流出事件が発生したときの対応から逆算してシステムを構築する」という独特の考え方や、「地方自治体から業務を受注するために、(個人情報の取り扱いを適切に行っている民間事業者に対して使用が認められる)プライバシーマークを取得する必要性が増してくる」といった、営業上の戦略を披露した。
さらに、「情報漏洩時における対応の一環として模擬記者会見を実施して以降、経営層の意識が飛躍的に高まった」との事例紹介もあった。
最後に、企業での個人情報保護と今後の対策のあり方について、「経済産業省ガイドラインに記載されている組織的、人的、物理的、技術的安全管理措置については、取り扱う情報の性質に応じた適切な措置に関する相場観を醸成する上で、日本経団連の役割に期待する」との意見が出された。
日本経団連では、今回のフォーラムをはじめとして、会員企業・団体に対し、個人情報保護に向けた体制整備に関し、必要な情報を引き続き、提供していくこととしている。