日本経団連は12日、「統計の利用拡大に向けて」<PDF> と題する意見書を発表した。日本経団連はかねてより、政府統計の問題について、(1)作成に協力する企業の負担軽減 (2)利用者にとっての利便性向上――の観点から取り組んでいる。そこで今回の意見書は、新たな試みとして、景気関連統計の利用状況や利用上問題となっている点などをアンケート調査し、その結果を踏まえ、(1)統計の早期公表 (2)統計精度の改善 (3)表示・加工方法の改善 (4)情報提供方法の改善 (5)統計のスクラップ・アンド・ビルド――など、統計の利用拡大に向けた提言をとりまとめている。同意見書の概要は次のとおり。
アンケートは日本経団連会員企業を対象に実施し、短期的な景気動向をあらわす72本の統計について、利用状況や問題点を聞いた。
各統計の利用状況を、100点満点(すべての企業が利用していれば100、どの企業も利用していない場合は0)で指数化した。その結果をみると、多くの統計は15〜34の範囲に集中し、平均点は38.8にとどまっている。景気動向に関心が高いはずの企業においても、多くの統計は利用されていないという実態が明らかになった。
相対的に利用頻度が高い統計は、日銀短観や四半期別GDP速報、消費者物価指数などである。しかし、日ごろ利用している統計への満足度は決して高くなく、「精度が問題」「使い方の解説が不十分」「公表が遅い」との意見が多く寄せられた。
一方、利用頻度が特に低い統計は、特定分野の設備投資調査や、各種の総合指数などである。利用頻度が低い理由では、「関心がない」「知らない」との回答が多かった。
アンケート結果を踏まえて、次の五つの利用拡大策を提言している。
「月次調査は60日以内に公表する」との政府目標を、さらに短縮する必要がある。そのためにも、調査への回答の手間を大幅に削減すべきである。
農林水産分野に偏っている統計予算や人員を見直し、精度が疑問視されている個人・世帯や中小企業対象の統計調査に重点配分する必要がある。
府省横断的な「ユーザー会議」を設け、統計の表示・加工方法に関する利用者の要望を十分把握すべきである。
統計情報を提供する官庁ホームページの使い勝手を改善する必要がある。また、知名度の低い統計については、積極的なPRが求められる。
存在意義が乏しい分野の統計を廃止するとともに、本当に必要とされる統計を整備する上においては縦割り行政を改め、統計の企画・立案を集中化することが望ましい。