日本経団連(奥田碩会長)は16日、理事会の承認を経て「2004年度日本経団連規制改革要望」を発表した。日本経団連は毎年、全会員企業・団体を対象にアンケート調査し、ビジネスのニーズに基づく規制改革要望をとりまとめ、民間活力の発揮に向けた規制改革の実現を求めている。今年度は、164社から延べ926項目に及ぶ回答があり、寄せられた要望を、分野ごとに担当の政策委員会で精査して、最終的には15分野269項目を今年度の規制改革要望としてとりまとめた。同要望は今後、政府の規制改革・民間開放推進本部が実施する集中受付月間のスキームの中で検討、各省庁との折衝を経て、来年2月には政府としての対応方針が決定される予定となっている。
理事会終了後には、出井伸之副会長・行政改革推進委員長が村上誠一郎規制改革担当大臣を訪問し、同要望を手渡しするとともに速やかな実現を要請した。それに対し村上担当相からは、実現に向けて全力で取り組むとの発言があった。また22日には、内閣府の規制改革・民間開放推進会議において、大久保尚武・行政改革推進委員会共同委員長が同要望を説明、早期実現への協力を求めた。
今回とりまとめた要望を分野別にみると、金融・保険・証券分野(51項目)、運輸分野(24項目)、雇用・労働分野(23項目)の順で、項目数が多くなっている。
特にニーズの高い重点要望項目としては、「いわゆる『混合診療』の解禁」「派遣労働者を特定することを目的とする行為の禁止の撤廃」「ハイサルファーC重油に係る備蓄義務の免除・軽減」など、49項目を列挙した。
今回の全要望269項目のうち、新規要望が149項目と、全体の55%に及んでおり、規制改革に対するニーズが引き続いて強いことがうかがえる。
個別要望に加え、総論では、規制改革・民間開放推進会議が8月に策定した「中間とりまとめ」の早期実現を求め、特に、わが国初の試みとなる「市場化テスト」(官民競争入札の仕組み)は、小泉構造改革の掲げる「官から民へ」を実現するための重要な手段であり、その実効性を確保する観点から、来年中に特別法を制定するよう要望。市場化テストの制度設計における留意点としては、当面対象外とされている地方公共団体の事務・事業の早期対象化や、市場化テストに関する相談・苦情処理窓口の設置等を指摘している。
また、前記の「中間とりまとめ」において、当面重点的に民間開放を進めるべき官業として、約80の事務・事業(社会保険関連業務、職業紹介・雇用保険業務、運転免許試験、貿易保険業務など)が例示されている点に関連し、市場化テストに関係なく民間へのアウトソーシングが可能なものについては、例えば各省庁に数値目標を課すなどの措置を講ずることにより、積極的に民間開放を図るよう求めている。
さらに、「株式会社等の医療機関経営への参入」「学校に関する公設民営の解禁」などを含め、規制改革・民間開放推進会議が取り組んでいる14項目の重点検討事項にも言及。特に、長年の懸案事項である「混合診療の解禁」については、9月に小泉総理から、年内に解禁の方向で結論を出すよう指示が出されたこと等を踏まえ、患者中心の医療を実現するためにも、早期に実現するよう主張している。
(1)雇用・労働(2)医療・介護・福祉(3)企業年金(4)社会保険(5)流通(6)土地・住宅・都市再生(7)廃棄物・リサイクル/環境保全(8)危険物・防災・保安(9)情報・通信(10)金融・保険・証券(11)運輸(12)エネルギー(13)国際経済連携・通商(14)農業(15)そのほか――の15分野。
派遣労働者への雇用契約申し込み義務の廃止
女性の坑内労働禁止規定の見直し
確定給付企業年金における加入者範囲の見直し
住居系用途地域における共同住宅の付属駐車場の面積制限および回数制限の緩和
工場現場における現場代理人「常駐」の定義の明確化
輸入完成LPガス自動車に関する相互承認制度の導入
公的個人認証サービス制度の利便性向上
地方公共団体の保有する財産に係る信託の容認
サービサー法における商号規制の緩和
大量車両登録変更のための特例措置の実現
休止中の火力発電所における主任技術者不選任の容認
外国企業との契約に基づく専門的・技術的分野の外国人の受け入れに係る在留資格の整備
指定管理者の指定を受けた営利法人への地方公務員の派遣解禁