日本経団連の産業問題委員会エンターテインメント・コンテンツ産業部会(依田巽部会長)は10月27日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催した。会合には、第17回東京国際映画祭(10月28日号既報)におけるシンポジウムのために来日したハリウッド・スタジオの幹部のうち、ワーナーブラザース・エンターテインメントのクリストファー・J・クックソンCTO(最高技術責任者)や、ソニー・ピクチャーズ・エンターテインメントのアル・バートン副社長、ウォルト・ディズニー・スタジオのマーク・キンバル・デジタル制作部長らが出席。800万画素の「4Kデジタルシネマ」(4K)と呼ばれる日本発の超高精細映像技術がいかにハリウッドの映画制作に影響を与え、また今後の映画市場にどのような影響を与えようとしているのかについて講演した後、部会メンバーと意見交換を行った。
まず、クックソンCTOが、4Kの特徴として、(1)従来は表現できなかった色彩が表現できる (2)画像を映画館の観客の視野いっぱいに広げることができる (3)画面に近い席の観客でも細かな画像を見ることができる――ことを挙げ、4Kによって映写機と画像がより接近した、従来にない映画館の構造が可能になるとともに、質の高い音響・画像を観客に提供できると述べた。また、前日の東京国際映画祭のシンポジウムで、1962年の映画「ミュージック・マン」のネガを、世界で初めて4Kによる美しいカラー映像で再現、上映したことを紹介。40年以上も前のネガからでも美しい画像の情報を引き出せる映像技術の高さを強調した。
続いてバートン副社長が、4Kについて、「明日の技術ではなく、今すぐに使うことのできる技術である」と述べ、映画「スパイダーマン2」で4Kの技術を用いた理由として、サム・ライミ監督はじめ制作現場が、ストーリーやキャラクターを愛し、より良い作品を作りたいとのこだわりを持っていたことを挙げた。また、4Kでの制作・配信の現状を実体験から紹介した上で、「映画の画質の向上は、放送時の画質向上となり、一般市民に喜ばれる一方、デジタル化によるコスト削減で、ビジネスの側にも大きなメリットが生まれる」と語った。
その後の意見交換では、部会メンバーが「興行収入が増えるほどのインパクトがなければ、映画館の改修や高価な映写機器の購入にはつながりにくい」「世界にマーケットがある米国に比べて、日本の映画はマーケットが小さい」などの課題を指摘したことに対してクックソンCTOは、制作・流通段階でのコスト削減の効果が、上映側にももたらされるような交渉が必要とした上で、「市場が小さいほど、フィルムのプリントコストの負担が重く、デジタル化のメリットは大きいのではないか」と答えた。
最後に、4Kを生み、ハリウッドに認めさせた、デジタルシネマ推進協議会会長の青山友紀・東京大学教授が「(4Kは)日本発の技術なので、ぜひ日本で活用して経済活性化に役立ててほしい」と締め括った。