日本経団連タイムス No.2745 (2004年11月11日)

高コスト構造是正に向けた商流・物流システム改革を

−平井流通委員長が長野経協で講演


日本経団連の平井克彦流通委員長は、長野県経営者協会(安川英昭会長)が10月26日に長野・松本市内のホテルで開催した「第30回流通・サービス委員会/中信支部10月度例会」に来賓として出席した。長野経協会員企業などから約50名が参加した同会合において平井委員長は、日本経団連流通委員会の活動を紹介するとともに、繊維業界の最適サプライチェーン構築に自身が長年取り組んできた経験に基づいて、「企業の収益構造を筋肉質に変えるカギは、製造・配送・販売にまたがる商流・物流システムの効率化にある」と語った。

会合の冒頭、「高コスト構造是正に向けた商流・物流システムの改革」をテーマに講演を行った平井委員長はまず、回復基調にある日本の景気を持続可能なものとするためには、産業競争力の一段の強化に向けた企業の不断の取り組みが不可欠であると指摘。その上で、東アジア諸国との経済連携が進む中、国内産業が厳しい競争に生き残るには、製造された製品が消費者に届くまでの流通過程で生じるさまざまなコストを見直すことが喫緊の課題であるとして、昨年10月に流通委員会がとりまとめた「商流・物流の効率化に関する提言」2003年11月6日号既報)の内容を紹介しながら、製造・配送・販売にまたがる最適サプライチェーン構築が必要であることを強調した。
さらに日本の繊維流通の特徴である多重・多段階的な仕組みを、効率的なものに変える試みとして、自身が相談役を務める東レが実施している「新流通」の考え方を、具体的な事例をもとに紹介。子ども服のアウター、メンズ肌着、メンズ吸汗速乾シャツなど、商品ごとに「商品企画、生産、縫製、物流」といった役割分担を見直し、川上分野から川下分野までを一体化した産業と見なすことで、流通過程で生じる無駄を排除し、(1)多段階流通の集約化によるコストダウンなどから生ずる取引先のメリット (2)計画生産による生産の平準化やコストダウン、在庫削減等によるロスの減少など自社メリット――の両方を享受できる新たな仕組みづくりに取り組んでいることを披露した。

講演後に行われた意見交換では、「最適サプライチェーンの構築といっても、恩恵を受けるのは大企業ばかりで、中小事業者は置き去りにされるのでないか」との懸念を表した質問があった。これに対して平井委員長は、どのような産業・業態でも、サプライチェーンの中で役割を担える企業が生き残ることになるとした上で、「流通委員会において、最適サプライチェーンの構築を阻害する要因や課題について、企業規模の大小にかかわらず共通項を括り出し、検討していきたい」と応えた。

さらに、「物流コストの高さはつとに指摘されているが、物流事業者の努力が限界にきている中で、縦割り行政の弊害など、国の無駄使いを是正する真の構造改革に向けて、日本経団連として働きかけるべきではないか」との意見も出された。
これを受けて平井委員長は、企業人の努力にも限界があると一定の理解を示し、日本経団連としても、国に対して高コスト構造是正のための基盤整備を求めていくと述べた上で、地方の経営者からも具体的な要望を寄せてほしいと、参加者に呼びかけた。

【産業本部行革担当】
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