日本経団連タイムス No.2744 (2004年10月28日)

国の基本問題検討委員会、第2回会合を開催

−「わが国の情報戦略のあり方」/岡崎久彦・岡崎研究所理事長が講演


日本経団連の「国の基本問題検討委員会」(三木繁光委員長)は18日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催した。安全保障・外交や憲法問題など、国の基本的な重要課題について検討を進めるために今年新設された同委員会の第2回となる今回の会合では、岡崎研究所の岡崎久彦理事長(元タイ大使)が、外務省の企画調査部長や情報調査局長など、情報分析関係の仕事に自身が長年携わった経験に基づき、具体的な事例を交えながら、国としての情報戦略の重要性を指摘する講演を行ったほか、同委員会の下部組織である総合企画部会(内藤久夫部会長)の検討状況の報告がなされた。

米国発情報の重要性指摘/継続的収集が情勢判断の極意

「わが国の情報戦略のあり方」をテーマに講演を行った岡崎理事長はまず、国際情勢を分析する上では、あらゆる角度からの情報収集も重要であり、特に米国発の情報が重要であると指摘。さらに、情報機関の扱う情報だけでなく、ニューヨーク・タイムスや、ワシントン・ポストなど、米国の一流新聞に掲載される情報の有用性も強調し、そのような有用な情報を継続的に収集することで、国際情勢の流れを正確につかむことが、世界の情勢判断の極意であると説いた。

情報組織のあり方については、情報の扱いには「収集」と「分析」の2つの側面があるとし、また、衛星情報等の情報収集については米国が圧倒的な強みをもっており、日本独自で情報収集能力を高めることは難しいことから、日本はより精度の高い情報を保有する米国の情報機関と連携して情報を入手・活用し、情報分析の分野におけるシステムの構築をより重視していくことが必要であると指摘した。

経済情報については、景気の上下など、情報を収集・分析する目的が非常に短期的であることなどから、国の情報機関が扱う情報としてはそぐわず、むしろ民間が活躍すべき分野であるとの見解を示した。

講演後の意見交換で、委員から、最近の日中間の政治と経済の関係について問われた岡崎理事長は、歴史問題は当面、政治や経済の問題と切り離して考えざるを得ないのではないかとの考えを述べるとともに、歴史教科書をめぐる動きや報道のあり方など、日本国内の動きにも問題があったと指摘した。

経済界の視点で「憲法」など検討

続いて、同委員会総合企画部会の内藤部会長が、8月以降、憲法や外交、統治システム、安全保障などのテーマに関する有識者からのヒアリングを行ったことなど、同部会の活動状況を報告。あわせて、部会での議論で、「一国平和主義ではなく、国際協力・貢献を伴う積極的な平和主義が必要ではないか」「東アジアにおいて、過去の歴史の上に、経済面を中心に、新たなリーダーシップを発揮していくことが重要」との意見のほか、公共に対する意識や個人の義務・責任を意識することの重要性を指摘する意見、また、統治システムに関して政治主導への流れを一層強化する必要性を説く意見、さらに喫緊の課題として、憲法改正のための国民投票などの手続き整備が必要との見解などが示されたことを紹介した。
その上で内藤部会長は、同部会でのこれまでの議論を受けて、今後の検討の方向として、経済界の視点に軸足を据えつつ、憲法、安全保障・外交を中心に検討を進めると説明し、了承された。

今後、同委員会は、同部会を中心として各論点についての議論を深め、来年はじめを目途に、議論の整理を行うべく、検討を進めていくこととしている。

【環境・技術本部技術・エネルギー担当】
Copyright © Nippon Keidanren