日本経団連は6日、都内のホテルで環境省との懇談会を開催した。環境省からは小池百合子環境大臣はじめ、能勢和子政務官、炭谷茂事務次官、松本省藏地球環境審議官、西尾哲茂大臣官房長らが、日本経団連からは奥田碩会長、森下洋一評議員会議長・税制委員長、千速晃副会長、宮原賢次副会長、渡文明評議員会副議長、関係委員会の委員長・部会長ら約40名が出席。地球温暖化問題や廃棄物・リサイクル問題に対する日本経団連の見解や取り組みを説明するとともに、環境省側と自由討議を行った。このなかで日本経団連は、環境税の創設について断固反対であることをあらためて強調した。
懇談の冒頭にあいさつした奥田会長は、環境と経済を両立する重要性を指摘した上で、地球温暖化問題については、「企業による技術革新と国民のライフスタイルの変革などによって、温室効果ガスを削減できる」として、環境税の創設には反対であることをあらためて強調した。
続いてあいさつした小池環境相は、個人や事業活動のライフスタイルをいかに変えるかが重要であるとした上で、環境省は「脱・温暖化社会」と「循環型社会の構築」の2つを柱にしていると説明した。
また、日本経団連が反対している環境税については、「国際競争力の低下や産業の空洞化に対する懸念をどう払拭するか話し合っていきたい」と語った。
次に、山本一元・環境安全委員会共同委員長が、地球温暖化問題への日本経団連の取り組みを紹介。このなかで山本共同委員長は、環境省が検討している環境税や国内排出量取引制度について、企業活力や国際競争力の低下、国内産業の空洞化につながることなどから、強く反対するとの意向を示した。
また、安全確保が大前提と断った上で、当面の地球温暖化対策の切り札は原子力であると述べ、「原子力の推進に対して、より積極的な姿勢を示してほしい」と環境省に要望した。
次に、廃棄物・リサイクル問題と環境規制について発言した新美春之・環境安全委員会共同委員長はまず、日本経団連が自主行動計画を毎年とりまとめ、積極的・自主的に産業廃棄物の最終処分量削減に努め、着実に成果を出していることを報告。また、リサイクルの促進については、「不法投棄は厳しく罰し、リサイクルは規制を緩和して推進するとの考えに立って、規制を抜本的に見直してほしい」と語った。環境規制については、「検討の早い段階から企業の実態に目を向け、現場の声を政策に反映してほしい」との意見を述べた。
また、自然保護協議会の大久保尚武会長は、同協議会が、自然保護活動をしている内外のNGOへの支援を行っていることや、企業が自主的に自然保護活動をしていることなどを紹介し、企業の自主的な取り組みを最大限尊重するよう環境省に求めた。
日本経団連の説明に対して小池環境相は、「守ろう地球」のようなキャッチコピーや共通のロゴをつくって、地球環境保護に対する国民への普及・啓発活動に努めてはどうかと提案した。
また、日本経団連から反対の声が相次いだ環境税については、国を挙げて地球温暖化問題に取り組むというアナウンス効果や、環境への配慮を社会にビルトインしていく手段として有効であると述べ、企業の国際競争力の低下や国内産業の空洞化などに配慮するべく、討議していきたいと語った。
不法投棄については、今月27日から施行される改正廃棄物処理法で、硫酸ピッチの不法投棄対策を強化したことを紹介し、「警察や関係省庁などと連携して取り締まりを強化していきたい」と述べた。
原子力については、CO2削減に対して非常に有効であるとした上で、安全性の確保を図りつつ、どうしたら前に進めるか共に考えていきたいとの意向を示した。
続いて行われた自由懇談ではまず、森下評議員会議長・税制委員長が、日本の産業界が国際的に最高レベルのエネルギー効率をすでに達成していることから、「民と官が結束して、これまでのように努力していくべきである」と述べ、環境税に対して強い反対の意を表明した。
このほか、環境税について日本経団連からは、「環境税の創設は産業の海外移転を促進させることとなり、地球全体の温暖化防止には寄与しないのではないか」「環境税は公平性や効率性の面で疑問がある」など、その創設に反対する意見が相次いで出された。
これに対して環境省は、「CO2削減に対する産業界の努力は十分認識しているが、それだけでは足りず、追加策が必要」「環境税を国民に広く負担してもらうことで、CO2削減の中期的な効果を期待している」などと答え、意見は平行線をたどった。