日本経団連タイムス No.2736 (2004年9月2日)

ハード・ソフト業界にユーザーは何を期待?

−第1回エンターテインメント・コンテンツ関係者連携懇談会/講演を聴取


日本経団連の産業問題委員会(齋藤宏共同委員長、岡村正共同委員長)は8月24日、東京・大手町の経団連会館で「エンターテインメント・コンテンツ関係者連携に関する懇談会」(座長=岡村共同委員長)の第1回会合を開催した。今回新たに発足した同懇談会は、ハードウェア事業者とソフトウェア事業者、キャリア事業者など38社・5団体で構成され、これら事業者が業界横断的に相互理解を深め、課題を整理するとともに、新しいエンターテインメント・コンテンツ・ビジネスの将来像を探ることを目的としている。

日本経団連産業問題委が開催

会合では、「ハード業界・ソフト業界にユーザーは何を期待しているのか」をテーマに、中井秀範・キャスティ社長、鈴木祐司・NHK放送文化研究所主任研究員から説明を聴取、意見交換を行った。

はじめに講演した中井社長は、「昨今、著作者の権利について、財産権としての著作権にスポットが当たっているが、著作者の権利には、見せたいもの、聞かせたいものを提供するという公表権などの著作者人格権としての部分もあることを忘れてはならない」と述べ、エンターテインメント産業の基本精神は「お客様に代金以上の満足感を与えること」との考えを述べた。さらに、「玉石混交の情報が氾濫する時代にこそ、安心感を与えるブランド・イメージを構築すべきだ」として、今後、業界横断的に検討をしていくべき課題を提示した。
また、同時に新しい才能を集めることやその才能が生み出したものに対する相当の報酬を得られる仕組みづくりの必要性も強調した。

鈴木主任研究員は、地上デジタル放送の視聴に関する調査結果をもとに、ユビキタス社会におけるエンドユーザーの行動や期待について解説し、「新技術が登場しても、すぐに反応する層は10%程度、それに連動して対応する層を合わせても全体の50%に過ぎない」と指摘。その上で、残りの50%の層を動かすためには、インフラの整備と配信コストの低下が必要との認識を示した。さらに、「シンプルでわかりやすく、ニーズに対応していれば、新技術が全体を動かすことは可能」であるとして、テレビのリモコン機能を有する携帯電話や、折り曲げ可能なフラットディスプレイに対するユーザー行動の変化を説明、今後の開発の進展に期待を寄せた。

同懇談会では、今後3〜5年のエンドユーザーのニーズ変化やエンターテインメント・コンテンツ流通を拡大させるための課題などについて、検討していくこととしている。

【産業本部産業基盤担当】
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