日本経団連は7月29、30の両日、東京都内で「教員のための経済・社会研究プログラム」を開催した。同プログラムは、日本経団連が昨年発表した「若年者の職業観・就労意識の形成・向上のために〜企業ができる具体的施策の提言〜」<PDF>のフォローアップとして、子どもたちに進路指導や職業観教育を行う教員自身の意識改革と、社会的視野の拡大を目的としたもの。初めて実施した今回のプログラムには、高校の教員を中心に22名が参加。企業の人事制度や企業が求めている人材像、経営環境への企業の対応など、教員が日ごろ聞くことが少ない企業の実態を聴取するとともに、グループ・ディスカッションを行うなど、問題解決プログラムに取り組んだ。
第1日は、「企業はどんなことを考えているのか〜環境、戦略、人材、学習の視点から〜」と題して、日本アイ・ビー・エムの人事・組織関連事業人事・HRIT部長である小須田秀厚氏が、企業の仕組みや企業が果たしている四つの役割((1)モノづくり (2)仕事づくり (3)人づくり (4)富づくり)について述べた。特に、人づくりの観点では、自発的にスキルアップを図ろうと努力する社員を積極的に支援していくことが、仕事に対する求心力の確保や会社の利益につながると指摘した。
次に、「求められる人材像」をテーマに講演した旭化成の佐藤彰洋人事労務センター人事グループ東京人事担当課長は、学生たちの企業活動や仕事に対する理解不足を指摘するとともに、企業の採用姿勢が、従来の「ポテンシャル(保有能力)採用」から「コンピテンシー(発揮能力)採用」に移行していると語った。さらに佐藤氏は、マニュアル型や指示待ち型ではなく、「考える力」「行動する力」を身に付けた人材を、企業が求めていることを強調した。
古河電気工業の顧問で、法政大学キャリアデザイン学部教授でもある桐村晋次氏からは、「経営環境の変化と企業の対応」と題して講演を聴取。IT化やグローバル化といった経営環境の変化に対応した企業の経営戦略の立て方や意思決定、実行のプロセスについて述べた桐村氏は、「社員に対しては問題発見・解決能力が強く求められており、自分自身への理解を深め可能性を発見し、自律的・計画的にキャリア形成・向上を図る姿勢が欠かせない」との考えを示した。
第2日は、参加者が3つのグループに分かれ、日本産業訓練協会の岩男伸彦講師の指導により、問題解決プログラムに取り組んだ。参加者は、学校教育や進路指導に関する問題点について活発な意見交換を行い、グループ・ディスカッションを通して導き出した解決策を、全体会において各グループの代表者が発表して締めくくった。
参加者からは、「企業の実情を知るとともに、キャリア教育の重要性を実感した」「参加者相互の交流や意見交換の場があり、大変有意義であった」「今後は各県単位で開催してほしい」などの意見や要望が寄せられた。
日本経団連は、来年度も同プログラムを実施するとともに、企業(工場)見学やインターンシップ、企業人講師の派遣など、学校の職業観教育の充実に向けて、引き続き協力していきたい。