日本経団連は7月21日、東京・大手町の経団連会館で、「イラク復興への日本政府の取り組み」に関する説明会の第4回会合を開催した。会合には、日本経団連から国際協力委員長を務める西岡喬副会長はじめ、中東・北アフリカ地域委員会、日本トルコ経済委員会、日本イラン経済委員会など関係委員会の委員ら約80名が出席。イラク復興メカニズムの展開について、外務省の中村滋イラク復興支援等調整担当大使、古田肇経済協力局長らから説明を聞くとともに、意見交換を行った。
日本はイラク復興支援に対して無償15億ドル、円借款35億ドル、合計で50億ドルの支援公約を行った。そのうち、現在動いているのは、無償資金の15億ドルで、二国間支援で直接イラクに出すものは8億ドル、国際機関を通じてイラクを支援するものは7億ドルを目安としている。国際機関に出す7億ドルには、国連と世銀による10億ドルの信託基金に拠出した4.9億ドルも含まれる。この基金を通じて、UNDP(国連開発計画)やWHO(世界保健機関)を含む23の国連機関による資金援助を実施する。なお、基金の管理や運営にかかわる国際会議の議長を日本が務めており、今年の10月に東京でイラク復興支援国会議を開催する予定である。
円借款については、債務救済問題の解決が実施に向けての大前提であり、パリクラブ(主要債権国会議)における議論を通じて各国との調整を進めていきたい。同時に、イラクに人が入って本格的な円借款プログラムを行うためには、治安状況の改善が最大の課題である。来年1月に国民会議の総選挙が行われ、新政府がつくられる。今後の援助の中で、新政府と債権、債務関係を結び、円借款を実施する目途をつけていくことになる。
6月にできた暫定政権は、来年1月の選挙のための選挙管理内閣であり、今後1年間の政治プロセスは、まさに選挙の実施要領を確立し、速やかに新しい政権をつくり出すものである。宗派や民族、州との融和を図りながら、スンニ派、シーア派、クルド人、トルクメニスタン人の間で対立が起きないようにしていくことは、今後の政局を安定的に運営していく上で肝要である。
イラクでは治安状況が悪化しており、いつ平静に戻せるかわからない。しかし、復興支援を遅らせるという考えはない。復興支援は、雇用の促進による治安の改善、政情不安の解消に効果がある。イラク国民の将来に向けての夢をつくる環境を整備することにも、大きな役割を果たしている。難しい環境の中、援助はやれることからやっていく。無償支援15億ドルのうち、11.6億ドルの案件の内容が決定・実施されており、残りの無償支援についても、状況を見据えて実施していく。