日本経団連の特別委員会等であるNICC協議会(立石信雄委員長)は2日、東京・大手町の経団連会館で第3回総会を開催した。総会では、NICC(日本経団連国際協力センター)の2003年度事業報告や2004年度活動計画の説明のほか、企業が実施している人材育成の事例研究として、「アジア戦略と人材育成〜中国を中心に〜」をテーマに、講演を聴取した。
冒頭あいさつで立石委員長は、「本年度で設立10年という節目の年になるNICCは、大きな転換期を迎えている」と述べ、政府の行政改革による公益法人の見直しや、企業から寄付を受けている国際協力支援拠出金の減少などにより、NICCを取り巻く環境が非常に厳しくなっていると語った。その上で、今年度を、次の10年のスタート年と捉え、事業面や財政面などあらゆる面を見直し、新たな事業展開をめざしているNICCの状況を紹介した。
次に、NICC事務局が、2003年度事業報告や2004年度活動計画、さらに、次の10年に向けた活動として、企業からの国際協力活動支援拠出金の増強活動について、支援企業数の拡大に向けた取り組み状況を説明するとともに、NICCを支援している協議会会員に対して感謝の意を表し、引き続きの支援を呼びかけた。
続いて、企業が実施している人材育成の事例研究として、「アジア戦略と人材育成〜中国を中心に〜」をテーマに、松下電器産業の中村好伸グループ採用センター所長と、山九の北川恭一中国事業戦略室室長の講演を聴取した。
先に講演した松下電器の中村所長はまず、松下電器の中国事業戦略に言及した上で、自社の中国における人事の重点取り組み課題として、(1)“現地化”の推進 (2)成果主義・実力主義の徹底 (3)グループ総合力の発揮――の3点を挙げた。さらに、中国における日系企業の労働市場での位置付けにも触れ、「中国の学生が就職したい企業のアンケート調査では、日系企業のランクが低い」と指摘。自社が求める人物像の明示や、適時・適地・適材採用、中国技術リソースの重点強化など、中国における採用戦略の具体的な考え方を示した。
次に講演した山九の北川室長は、中国戦略において、日本人の派遣人材(中国要員)の育成はプログラムとして確立してきたとする一方、現地社員の人事・研修制度がいまだ体系的になっていないために、現地法人共通の人材育成プログラムの確立が急務であると述べた。その上で、中国における人材育成の根本的課題認識として、日本本社とのコミュニケーションや日本の企業体質などが、現地からの経営者輩出の阻害要因となっていると指摘し、日本本社自身がグローバル化を図ることの必要性を強調した。
NICC協議会は、NICCを財政的に支援している企業から構成、NICCの活動の理解を深めるとともに、委員企業の意見を集約してその活動に資することが目的。
NICCは、1994年に日経連(当時)が設立した団体で、開発途上国の経営者団体の健全な発展ならびに経営管理者の育成をめざし、招聘研修事業などを実施しているほか、NICCの活動内容や各種情報を毎月1回提供する「お知らせメール」を発行している。詳しくは、NICCホームページ(URL=http://www.nicc.or.jp/)まで。