日本経団連の産業技術委員会(庄山悦彦委員長、桜井正光共同委員長)と産業問題委員会(齋藤宏共同委員長、岡村正共同委員長)は7月28日、東京・大手町の経団連会館で、内閣官房・知的財産戦略推進事務局の荒井寿光事務局長を迎え、合同会合を開催した。
今年3月の合同会合では、共同提言「知的財産推進計画の改訂に向けて」(3月25日号既報)をとりまとめたが、今回の合同会合では、産業界をはじめさまざまな関係者の意見をもとに政府が策定した「知的財産推進計画2004」の説明を荒井事務局長から聞くとともに、今後の課題について意見を交換した。
説明の中で荒井事務局長は、2003年3月に知的財産戦略本部を発足し、同年7月に知的財産推進計画を決定してから進めてきた施策の進捗状況について、(1)知的財産高等裁判所の設置 (2)特許審査の迅速化 (3)職務発明規定(特許法35条)の改正 (4)大学における産学連携の進展 (5)企業における事業戦略・研究開発戦略・知的財産戦略の一体化の進展 (6)模倣品・海賊版対策の進展 (7)消費者保護基本法の改正 (8)コンテンツビジネス促進法の制定 (9)コンテンツビジネスの海外展開 (10)法科大学院における知的財産に強い法曹養成――の10項目に分けて報告した。
さらに、これからの課題として、(1)世界一の知財立国の実現 (2)知的財産権保護に関する憲法の改正 (3)情報窃盗罪の整備 (4)ニセモノ輸出防止条約の制定 (5)世界特許システムの構築 (6)標準化機関のパテントポリシー(特許が技術標準に含まれた場合の対処方針)の改善など標準と知的財産権をめぐる問題の改善 (7)コンテンツとハード業界の総合戦略づくりなどを通じたコンテンツ振興 (8)弁護士など知財人材の育成――などを挙げ、第1の課題である世界一の知財立国をめざした戦略を、今後も進展させていく考えを示した。
意見交換では、「事業や知的財産権の価値を見極めた融資を通じて、知財立国づくりに貢献したい」(齋藤産業問題委員会共同委員長)、「世界をリードする日本のハードウェアやコンテンツ、キャリアによって新しいビジネスモデルを構築することが必要である」(岡村産業問題委員会共同委員長)などの意見や、経済産業省、文部科学省、総務省など関係省庁に対して、一体的な取り組みを求める声があがった。
これを受けて、荒井事務局長は、「完成保証制度(中小コンテンツ制作事業者などの借り入れに対する信用保証制度)や改正予定の信託業法などをどんどん活用してほしい」「日本の技術は、日本国内で、素晴らしい技術とコンテンツとを結びつけてほしい」と応えた。
さらに日本経団連側からは、「映像産業振興機関の設置など、民間も努力をしているが、国も『支援する』旨の計画にとどまらず、コンテンツ税制の整備や予算の確保などを実現してもらいたい」(依田巽産業問題委員会エンターテインメント・コンテンツ産業部会長)、「特許法制の国際的ハーモナイゼーションを進めることが必要」(山本一元・旭化成相談役)といった意見が出された。
これに対して荒井事務局長は、「コンテンツ振興が国全体のメリットとなることを示して説明することが国の強力な支援を引き出す上で重要」と述べるとともに、「知的財産に関する制度も、グローバルな仕組みとしていきたい」と、課題に取り組んでいく考えを強調した。