日本経団連の経営労働政策委員会(経労委、奥田碩議長、柴田昌治委員長)は14日、東京・大手町の経団連会館で、今年度の初会合を開催した。会合では、2005年版の経労委報告に盛り込む内容等について、委員やアドバイザー間で意見交換を行った。同委員会は今後、会合を月1回程度開き、12月に2005年版の経労委報告を発表することとしている。
開会あいさつで、同委員会の議長を務める奥田会長は、「景気回復のためには、経済活動の主役たる企業が積極的に活動をしていかなければならない」とした上で、「賃金決定は、今後も生産性に即して行われるべきだ」との考えを示した。
さらに奥田会長は、労使交渉・労使協議について、「労使が賃金のみならず、『経営と労働』に関するさまざまな課題について議論する場へと変化している」と指摘。これらの諸課題に対して、経営者がどう考えるべきかの指針を作成する同委員会の役割が、一層高まっていることを強調した。
続いて、委員長である柴田副会長があいさつ。経労委報告が、地方の経営者の間で春季労使交渉や賃金決定の指針として広く認知され、高い評価を得ていることを紹介するとともに、「今年度は、『経営と労働』に関しての構造的な問題にも言及していきたい」との意向を語った。
次に、2005年版の経労委報告の構成・内容などについて意見を交換。日本企業や社会を取り巻く諸課題を中心に、さまざまな意見が出された。
会合の最後に奥田会長は、経労委報告は特に地方企業の経営者が大きな関心を寄せており、「地方経済の活性化に向けた対応策なども話し合いたい」と述べた。
◇ ◇ ◇経営労働政策委員会は、「経営と人」に焦点を当て、労使交渉に直接・間接に関係する諸課題について、春季労使交渉における経営者の基本的な態度・考え方の指針を報告書にとりまとめ、毎年発表している。奥田会長が議長、柴田副会長が委員長、副会長や関係委員会の委員長らが委員を務めるほか、学識経験者やエコノミストらがアドバイザーとして参加している。
昨年12月に発表した2004年版の経労委報告「高付加価値経営と多様性人材立国への道−いまこそ求められる経営者の高い志と使命感−」(1月1日号既報)では、高付加価値経営の実現に向け、多様な人材を活用する重要性を打ち出すとともに、労使の最重要の課題は企業の存続と雇用の維持であることから、一般論としては、一律的なベースアップは論外であり、定昇の廃止・縮小、さらにはベースダウンも労使の話し合いの対象になり得るとの主張を展開した。
また、「今後の経営者のあり方」についても言及し、高い志に裏打ちされた経営が、「活力と魅力溢れる日本」を創り上げていく道につながると指摘している。