日本経団連タイムス No.2730 (2004年7月15日)

日本経団連、独禁法改正で提言

−課徴金制度見直しなど/公取委案への対案を発表


日本経団連(奥田碩会長)は13日、「21世紀にふさわしい独占禁止法改正に向けた提言」を発表した。独禁法の改正については、公正取引委員会が4月に「独占禁止法改正(案)の概要」を発表、先の通常国会へ法案を提出しようとしていたが、課徴金の引き上げを中心とする公取委案に対して日本経団連が反対を表明、さらに他団体や学識経験者などからも意見が出されたことから、公取委は通常国会での法案提出を見送り、秋の臨時国会に法案を提出すべく、現在準備を進めている。そこで日本経団連は、公取委案への対案として同提言をとりまとめ発表した。同提言をとりまとめた経済法規委員会競争部会の諸石光煕部会長は、「単に課徴金を引き上げるというだけでなく、近代法制にふさわしい独禁法改正をめざしたい」と語った。同提言の概要は次のとおり。

1.基本的な考え方

  1. 独占禁止法の充実・近代化により、日本の国際競争力強化を図る。
  2. これまで、つぎはぎ的な法改正が繰り返されたことによる独占禁止法の措置体系の構造的な歪みや課徴金のぬえ的性格を正し、課徴金を「行政上の制裁」と明確に位置付け、21世紀にふさわしい競争政策の土台を構築する。
  3. 課徴金と法人に対する刑事罰の併科を解消し、諸外国の独占禁止法とも整合性のある法改正を行う。
  4. 公取委の権限強化に伴い、適正手続き(デュー・プロセス)をより一層確保し、準司法機関として真にふさわしい体制を構築する。
  5. 政府全体の責任において、透明かつ公正な手続きの下で独占禁止法改正作業を進め、法案提出に向けて、徹底した議論を行う。

2.課徴金制度の見直し

  1. 現行の課徴金制度では、課徴金の額は、カルテル対象商品の実行期間中における売上高の6%(加算・減算なし)となっている。
    課徴金の額の決定にあたっては、一定の基準額に、事件の重大性・悪質性の程度に応じて、加算・減算する。
  2. 加算・減算のため、透明性のある基準(割増率=最大100%、割引率=最大70%)を定める。

3.課徴金と刑事罰との調整

  1. 法人に対する制裁は課徴金に一本化し、刑事罰は個人(違反行為者)のみを対象とする。
  2. 仮に法人に対する制裁として、課徴金と刑事罰を併存するのであれば、両方を選択的に適用する。

4.課徴金の措置減免制度の導入

  1. 「課徴金を加算・減算する制度」と「法人への制裁の課徴金への一本化」を前提として、措置減免制度を導入する。
  2. 公取委の立入検査前に、重要な証拠を申告した事業者につき、課徴金を免除(第一申告者)、50%軽減(第二申告者)、30%軽減(第三申告者以下)する。

5.適正手続きの確保

  1. 現行の運用に問題の多い行政調査権限の行使につき、適正手続きを確保する。
  2. 審判手続きは、刑事手続きと同様、対等な立場に立つ事業者と審査官の主張を、予断をもたない審判官(判事経験者が中心)が公平な立場から判断を行う構造にする。
  3. 事業者に反論の機会がない「警告」の一方的な公表は廃止する。
  4. 経験豊富な法曹資格者や学識経験者を、公取委事務総局に積極的に採用する。

6.入札談合問題への対応

  1. 公共調達については、ダンピング受注への対応も含め、価格だけではなく、技術や品質等も考慮した入札制度へ見直す。
  2. 官製談合への対応として、違反行為をそそのかした発注者側の職員を、刑事処分の対象とする規定を創設する。
  3. 優越的地位の濫用や不当廉売に対する実効性のある基準を具体化する。
【経済本部経済法制担当】
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