日本経団連の経済法規委員会競争法部会は6月25日、公正取引委員会が5月19日から実施した「独占禁止法改正(案)の概要」に対する意見照会へのコメントを発表した。
自民党独禁法調査会は5月14日に、会期中であった通常国会への独占禁止法改正法案の提出を見送るとともに、今後の改正に向けての調整にあたっては、関係各方面からの意見を十分聴取するよう、公正取引委員会に要請した。これを受けて公正取引委員会は、「独占禁止法改正(案)の概要」について、5月19日から意見照会を実施。そこで日本経団連は、「当初案に拘泥することなく、新たな観点からの独占禁止法の改正案を創案すべきである」との同コメントを発表した。今後、日本経団連としても、代案を具体的にとりまとめることとしている。
同コメントで指摘している主な点は次のとおり。
今回の改正案で、課徴金が「行政上の制裁」であることを明確にした以上、違反行為に係る売り上げに一定率を乗じて、画一的に金額を算定する方式を維持したままで、一定率を大幅に引き上げることは、事案の内容に比して不当に重い制裁が科せられることになる恐れがあり、問題である。
今回の改正案は、課徴金と刑事罰との間で「調整」を行う方針を打ち出した。しかし、刑事罰と課徴金の根拠や両者の関係が明らかにされておらず、改正案の「罰金額の2分の1を課徴金から差し引く」ということの合理的な根拠がない。
法人に対しては課徴金に一本化し、刑事罰は行為者個人のみを対象とするのが簡明である。
欧米諸国で制裁減免制度が独禁法違反の抑止や摘発に一定の効果を発揮しているとの評価があるのは事実だが、その背景には、調査への協力等を評価する「連邦量刑ガイドライン」や司法取引など、制裁の柔軟な量定が行われていることを忘れてはならない。
改正案で示されているような、調査への協力などは一切評価せずに、単に申告の順番のみで措置減免の適用者を決める硬直的な制度では、事業者にとってコンプライアンスへのインセンティブが働かず、有効に機能するとは考えられない。
課徴金が制裁金である以上、審判手続きについても、これまで以上に適正な手続きを確保することが当然の前提となる。
課徴金を「行政上の制裁」と認めるのであるならば、審判官の身分保障を確保した上で、公正取引委員会の関与は法解釈に限定するなどして、公正取引委員会が審判官の判断を尊重する仕組みに改める必要がある。