経営タイムス No.2727 (2004年6月24日)
政・労・使・学識経験者の四者から成る厚生労働大臣の私的諮問機関、産業労働懇話会(座長=宮崎勇・大和総研名誉顧問)の第229回会合が16日、都内のホテルで開催された。会合には、坂口力厚生労働大臣、厚生労働省幹部、労働者側会員、使用者側会員、学識会員ら約30名が参加。このうち使用者側会員として、日本経団連からは、奥田碩会長(トヨタ自動車会長)や三木繁光副会長(東京三菱銀行頭取)、和田紀夫副会長(日本電信電話社長)らが出席した。今回の議題は「少子・高齢化時代における雇用その他の諸問題について」。雇用問題を中心に、景気回復や多様な働き方、社会保障改革などについて意見を交わした。
冒頭のあいさつで坂口厚労相は雇用問題について、少子・高齢化による労働力の構造変化を見据えた新たな雇用対策の展望を考える時期にあり、今後10年程度を視野に入れた雇用戦略が必要だと述べた。
また、国民誰もが意欲と能力に応じて働ける社会を実現することが重要であるとし、国民がもてる力を発揮して働けるよう適切な対策を講じることで労働力率を引き上げ、今後10年間で300万人の労働力増を見込んでいるとの考えを明らかにした。
続いて行われた懇談で発言した奥田会長はまず、社会保障制度について、財政や税制と一体的に改革し、持続可能な制度を構築することが求められているとした上で、「税・保険料などの負担と給付のあり方を含めた社会保障制度の一体的な見直しについて、早急に協議の場を設置すべきだ」と語った。
また、雇用問題の解消については、景気の回復が何よりも重要であり、適切な経済政策の実施を、政府に対して引き続き求めた。その上で、国民や企業の意欲・活力を引き出す観点から、“新たな豊かさ”を具体的に提示していくことが求められているとして、観光の振興や農業の再構築、福祉サービスの多様化、住環境の整備、エンターテインメント・コンテンツ産業の振興などを例に挙げ、「各地域がそれぞれの特色を強く打ち出し、その魅力を高めていくことが重要である」ことを強調した。
さらに奥田会長は、若年者対策が雇用問題で特に重要であると指摘。フリーターや若年失業・無業者などを大雑把に捉えずに、職業能力や働く意欲・ニーズをきめ細かく把握し、適切な職業紹介や教育を行う必要があるとの考えを示した。
そのほかの会員からは、景気回復について、「大企業と中小企業、中央と地方で二極化が進んでいるのではないか」(労働者側会員)、「雇用創出には持続的な経済成長が最も重要であり、それを支えるのは、資本蓄積と技術革新を生み出す企業のイノベーションである」(学識会員)などの意見が出された。
また、多様な働き方については、「時間管理ができない業務について、今後ホワイトカラーイグゼンプション制度を審議会などで十分議論してほしい」(使用者側会員)、「仕事と家庭の両立について、すでに労使で話し合いが進んでいる。労使自治を大事にしていくべき」(使用者側会員)などの発言があった。
社会保障改革については、「年金・介護・医療を一体的に検討する社会保障改革の検討の場と、検討の進め方について、早急に着手してほしい」(労働者側会員)、「人が幸福になるという視点が大事。受けるより与えるほうが大切という考えもある。物質と精神の両面を考慮する必要があるだろう」(学識会員)などの考えが述べられた。
最後に坂口厚労相は総括の中で、労使から要請のあった社会保障改革を協議する場の設定について言及し、「総理も自分も約束していることであり、(7月の参議院)選挙後にはできあがるのではないか」との見通しを示した。