経営タイムス No.2721 (2004年5月13日)
日本経団連は4月26日、東京・大手町のJAビルで、中川昭一経済産業大臣との懇談会を開催した。同懇談会には日本経団連から奥田碩会長、槙原稔副会長、香西昭夫副会長、千速晃副会長、宮原賢次副会長、和田紀夫副会長らが、経済産業省からは、中川大臣、林洋和通商政策局長らが出席したほか、全国農業協同組合中央会の山田俊男専務理事がオブザーバーとして参加。日本の経済連携協定(EPA)への取り組みについて意見交換を行った。奥田会長は、今後本格化する東アジア諸国とのEPA交渉について、早期の実質合意達成を要望。中川大臣は、「国益として守るべきは守った上で積極的に推進していきたい」と応えた。
冒頭あいさつで奥田会長は、今年3月に日本・メキシコ間でEPAが大筋合意に達したことについて中川大臣らの尽力を高く評価した上で、来年早期の発効へ向けての継続的努力を求めた。また、今後本格化する東アジア諸国とのEPA交渉についても言及し、タイ、フィリピン、マレーシアとは2004年末までに、韓国とは2005年中に、それぞれ実質合意を達成してほしいと述べた。
さらに奥田会長は、経済連携の強化においては、貿易や投資の自由化に加えてヒトの移動なども問題となり、これまで以上に国内調整が必要になると指摘。そのために日本経団連が今年3月、経済連携強化のために官邸主導の推進体制整備が必要であることを提言したことを挙げ、この問題で政治がリーダーシップを発揮することの重要性をあらためて強調した。
これに対し中川大臣は、EPAの推進のためには、「オールジャパン」で臨むことが不可欠であるとして、政府と経済界や農業界が一体となって取り組む必要性を指摘するとともに、他省の大臣とも同様の懇談会を開催することを提案した。
さらにメキシコとのEPA大筋合意達成については、小泉純一郎総理がリーダーシップを一貫して発揮したことが大きかったとした上で、今後も、総理のリーダーシップが重要との考えを述べた。
また、中川大臣はメキシコとのEPAを来年早い時期に発効させたいとの意欲を示すとともに、今後の東アジア諸国とのEPA交渉については、「投資ルールやパッケージの大小、ヒトの移動など各論において難問があるが、国益として守るべきは守った上で、積極的に推進していきたい」と語った。
意見交換では、日本経団連側から、「農業問題は国民的課題。日本経団連としても農業界と対話していきたい」「産業界として農業界が取り組んでいる農政改革を支援したい」との意見表明とともに、「5〜10年先を見据え、今から日米EPAについても検討すべき」「米国は自国の企業がタイで内国民待遇を受けられる条約をタイと結んでいる。日タイ間でも同様な高度なレベルの条約を結ぶべきだ」などの意見が出された。
これに対して中川大臣は、「農業関係者も農業の構造改革の必要性を十分認識している」「アメリカとのEPAは、すぐに検討すべきとは言えないものの、勉強しておくべき事柄である」「日タイEPA交渉には課題も多いが、その推進はほかのEPA交渉にもよい影響を与える上、日本からの投資増加はタイにとってもメリットとなる」と述べた。
また、奥田会長は、タイ、フィリピンなどからの看護師・介護士の受け入れについて、「相手国のトップに会うと、必ずその受け入れを求められる。医療・介護の現場には、現実に人手が足りないという声もある。この問題をタブー視せずに検討する必要がある」と述べ、受け入れの際に問題となる外国人看護師・介護士の日本語能力については、送り出し国で日本語教育を実施すればよいとの考えを示した。
これについて中川大臣は、「この問題には、特にフィリピンが強い関心を持っている。この問題を議題に挙げ、話し合いを続けていくことが大切だ」と応えた。