経営タイムス No.2720 (2004年4月29日)
日本経団連の奥田碩会長は26日、首相官邸で小泉純一郎首相と会談し、年金改革について緊急要請を行った。会談には、福田康夫官房長官と坂口力厚生労働大臣が同席。奥田会長は、社会保障制度の一体的見直しと、そのための協議を国民に開かれた場で行うよう要請するとともに、経済状況等により年金保険料の引き上げ実施を一時停止できるようにすべきと指摘。さらに、現在国会で審議中の年金改正法案の処理にあたっては、これらの要請を踏まえた附則または附帯決議を採択するよう求めた。これに対して小泉首相は、日本経団連の要請の趣旨に理解を示した上で、「真剣に受け止め、検討する」と応じた。
奥田会長はまず、現在国会で審議中の年金改正法案の政府案と民主党案は、制度体系の基本的な考え方が大きく異なり、両法案の調整が可能とは思えないことから、このままでは年金への国民の不安・不信がさらに強まるとの危機感を示した。
その上で、年金だけでなく医療や介護など社会保障制度全体について、税・保険料などの負担と給付のあり方を含めた一体的な見直しが必要であるとし、政府に社会保障制度全体の見直しを早急に実現するよう求めた。
さらに、政府が税制の抜本改革を2007年度に実現する方針であることから、社会保障全体の見直しを税制の抜本改革と合わせて行うよう要請し、その際には、公的年金制度における負担と給付についての日本経団連のこれまでの意見を十分考慮してほしいと述べた。
また、政府案で示されている年金保険料の引き上げについては、経済・社会状況等を勘案し、その実施を一時停止できるようにすべきと指摘した。
くわえて、社会保障制度全体の見直しは国民に開かれた場で行うよう求め、「より開かれた新しい場を考えたらよいのではないか」と語った。
最後に奥田会長は、現在審議中の年金改正法案の処理にあたっては、今回の日本経団連の要請を踏まえた附則ないし附帯決議を採択することを要請した。
これに対して小泉首相は、日本経団連の要請と認識は同じと述べた上で、「年金は医療、介護と一緒に検討していく必要がある」とし、日本経団連の要請を真剣に受け止め、検討すると語った。