経営タイムス No.2713 (2004年3月11日)
日本経団連の奥田碩会長は8日、公正取引委員会が現在進めている独占禁止法(独禁法)の改正案について、多くの残されている問題に対する説得力ある論拠や具体的な制度設計が明らかにされなければ、日本経団連として容認できず、反対であるとの意向を明らかにした。さらに奥田会長は、課徴金を行政制裁金と改めて位置付けた上で、独禁法の措置体系全体を見直すべく十分に議論しコンセンサスを得るべきだと述べ、今回の改正案の見直しを求めた。
独禁法改正案について、奥田会長は記者会見で、課徴金を公正取引委員会が「行政制裁」と認め、刑事罰との調整を行うとしたことや、各事業法と二重規制になることから日本経団連が反対していた電力・ガス・電気通信などの公共事業に対する新たな規制が見送られたことは評価した。
しかし、改正案にある課徴金引き上げの根拠や、刑事罰との調整方法、加算制度・措置制度の具体策、制裁にふさわしいデュー・プロセス(適正手続き条項)の確保など、多くの問題が残っていると指摘。その上で奥田会長は、「これらの問題に対して説得力ある論拠や具体的な制度設計を明らかにしないまま拙速な法改正を行うのであれば、日本経団連として容認することはできない」として、今回の独禁法改正案には反対との考えを強調した。
さらに、日本経団連がこれまで、自由市場経済の基本法としての独禁法の役割を尊重し、違反事件をなくすために、措置体系全体の抜本的見直しを求めてきたにもかかわらず、公正取引委員会が、課徴金の強化のみを取り出して独禁法改正を拙速に進めようとしたことが、調整作業の難航や法案化作業の遅れなど、今回の混乱を招いている一因と分析。
その上で奥田会長は、公正取引委員会に対し、課徴金を行政制裁金として位置付けた上で、改めて、制裁にふさわしい制度設計や執行体制の構築など、措置体系全体の見直しについてのオープンな議論を、時間をかけてでも行ってコンセンサスを得るべきだと語った。
◇ ◇ ◇公正取引委員会が進めている独禁法の改正案は、(1)課徴金を現行の6%から少なくとも10%程度に引き上げる (2)罰金額の2分の1相当分を「行政制裁金」である課徴金から減額する (3)違反行為を繰り返す累犯や期間3年超の違反には課徴金を最高5%加算する (4)公正取引委員会の調査開始前にカルテルを自ら離脱し情報や資料を提供した企業の課徴金を減免する (5)最初に情報や資料を提供した企業の刑事告発は行わない――などが主な点。
これに対して日本経団連は、独禁法違反行為をなくすためには、課徴金を強化するよりも、公正取引委員会の能力・体制の整備や、発注者が仕掛ける官製談合の問題をどうするかを考えるべきではないかと主張。さらに、今回の改正案で示されている課徴金引き上げの根拠が不明確であることや、制裁としての課徴金と刑事罰の両方を課することは憲法が禁止している二重処罰にあたる可能性があること、措置減免制度の具体的な制度設計が不明であることなどを指摘。課徴金の強化のみを内容とする法改正を行うべきではなく、措置体系全体の抜本的見直しを求めている。