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経営タイムス No.2710 (2004年2月19日)

外国政府の不公正通商措置等への調査開始申立制度整備を

−日本経団連が提言発表


日本経団連は13日、外国政府の不公正通商措置等に対する調査開始申立制度の整備を求める提言を発表した。

日本では、欧米などと異なり、外国政府による不公正な通商関連措置などによって企業が損害を被った場合、政府に対してその是正に向けた調査開始を求める手続きがない。そのため、企業は所管主務大臣に対して業界団体などを通じた働き掛けを行うしかない。そこで、日本経団連は過去二度にわたり、外国政府による不公正な措置などに対する調査開始手続きの整備を求めてきたが、未だ実現に至っていない。

今回の提言は、現行の所管主務大臣による職権調査による対応に加え、民間企業による申立制度を整備することにより、企業が手続きに則って調査開始の申し立てができるようにするもので、官民一体となって諸外国の不公正な通商措置に対峙し、有利に交渉していくことを目的としている。

日本経団連では、同提言の実現を政府に強く働き掛けていくとともに、外国政府と通商交渉などを行う権限や組織の一元化についても、経済界の意見を3月中旬を目途にとりまとめることとしている。同提言が求めている調査開始申立制度の概要は次のとおり。

【望まれる手続き】

外国政府の不公正通商措置などに対する調査開始申し立てに関する法律を制定するとともに、政府は、専門的人員の拡充、必要な予算措置などを積極的に講じるべきである。

(1)措置の対象

わが国が締約する国際協定が保障する利益に不利益を与える、またはそのおそれのあるすべての措置・慣行を対象とする。WTO諸協定、2国間・地域の経済連携協定なども含む。対象行為はモノ・サービスの貿易、投資、知的所有権などに関する協定に含まれるすべての措置などとする。

(2)申し立て要件

企業が悪影響を被った、または被るおそれのある、外国政府による国際協定が保障する利益に不利益を与えるまたはそのおそれのある措置・慣行の存在とする。

(3)申し立て者

申し立て者は、悪影響を被った、または被るおそれのあるすべての国内事業者とする。日本国内で事業活動を行っているすべての輸出者、私企業、業界・経済団体、生産者団体、労働団体などを含む。

(4)申し立て窓口・調整

申し立てを行う窓口を内閣に設置する。外国政府と通商交渉などを行う権限や組織の一元化とも関連するため、そのあり方について政府に早急な検討を求めるとともに、経済界としても考えをまとめていく。

(5)申し立て形式

申し立て者は、悪影響を与える、または与えるおそれのある措置などに関して、調査の開始を行うのに必要最低限の証拠をもって、調査の開始を申し立てることができるようにする。

(6)処理期間

政府は、企業・団体からの申し立てを受けてから一定期間内(例えば、原則45日以内)で当該案件について正式に調査を開始するかどうかを決定する必要がある。調査開始をした後、審査報告の提出まで、また審査報告の提出から政府が何らかの措置を決定するまでについても期限(例えば両方とも6カ月)を設けることが求められる。

(7)理由の提示

政府は、調査を開始しないと決定した場合には、具体的な理由を、書面により速やかに回答通知することが求められる。

(8)適正手続き

調査開始に関する通知、利害関係者による意見提出・公聴会の開催などの基本的な適正手続きが確保される必要がある。

(9)情報提供・目的外利用の禁止

政府は、申し立て者の求めに応じ、審査の進行状況などを示す必要がある。最終的な判断結果は、申し立て者の同意を前提に、秘密情報に係る部分を除き、一般に公開すべきである。また提供した情報については、目的外利用の禁止を明記する。

(10)既存法令との関係

関税定率法、外国為替及び外国貿易法など関連既存法令については、新法との整合性を確保するよう改正する必要がある。


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