経営タイムス No.2707 (2004年1月29日)
日本経団連は20日、「戦略的な国際標準化の推進に関する提言」を発表した。グローバル市場において競争力を持つためには、国際標準化に戦略的に取り組むことが不可欠になっていることから、日本経団連では昨年7月、産業技術委員会のもとに国際標準化戦略部会を設置。特に産業競争力強化の観点から検討を行い、同提言をとりまとめた。
同提言の概要は次のとおり。
技術開発を行う企業にとっては、開発した技術の国際標準の面での帰趨が事業戦略の重要な要素となりつつある。自社技術を含んだ国際標準が制定されれば、新たな市場が創出され、競争力の上で非常に優位な立場に立つことができる。一方、自社技術に不利な国際標準が制定されれば、自社技術を活用できないばかりか、新たなコスト負担も生じかねない。
国際標準の重要性に鑑み、欧米各国は官民あげて自国の優位性の確立に向けて政策を展開している。また、中国も国際標準化に戦略的な取り組みを始めつつある。
これに対してわが国では、産業界の国際標準化への関わり、政府の支援体制ともに必ずしも十分ではなく、戦略的な国際標準化活動が必要になっている。
わが国が積極的な国際標準化に対応していくためには、企業意識を改革する必要がある。そのためには、社内の国際標準化活動を統括するような組織の設置が求められる。
また、国際標準化に携わる人材を、企業内で積極的に評価すべきである。
企業におけるこうした国際標準化活動の強化を踏まえて、事業戦略に沿った国際標準を積極的に提案していくとともに、わが国全体としての国際標準化活動に産業界が協調して取り組むことが求められる。
欧米諸国の標準化政策においては、産業界の国際標準化活動への支援が重要課題として位置づけられている。わが国としても、国として戦略的に重要な分野においては、産業界の国際標準化活動を積極的に支援することが重要である。
技術標準の使用に特許の実施が前提となる場合は、権利者からライセンスを受けなければならない。国際標準化団体において知的財産の取り扱いルールを整備するとともに、わが国においても、標準に必須とされる特許を保有する第3者が、標準の普及を妨げるような行為を行った場合の独禁法や特許法上の対抗措置を検討すべきである。
国際標準化機関に対しては、各国から長期間にわたって同一の代表者が参画しており、ここで築かれた人的関係が標準の決定に影響するといわれる。国際標準を担う人材の育成・確保や、国際標準の検討に関係者が長期間参加できるような方策が求められる。