経営タイムス No.2703 (2003年12月15日)
日本経団連は9日、東京・大手町の経団連会館で全日本金属産業労働組合協議会(金属労協、鈴木勝利議長)との首脳懇談会を開催した。日本経団連からは柴田昌治副会長・経営労働政策委員長、普勝清治、加藤丈夫の両労使関係委員会共同委員長らが、金属労協からは鈴木議長、古賀伸明・電機連合委員長、加藤裕治・自動車総連会長、小出幸男・JAM会長、宮園哲郎・基幹労連委員長、福田良雄・全電線委員長の各副議長らが出席。製造業の国際競争力強化などについて意見を交換した。
冒頭、金属労協の鈴木議長は、日本の製造業に求められている国際競争力の強化について、「熾烈な国際競争に勝つため、企業の技術力強化や国内の高コスト体質是正などの問題に、労使の垣根を越えて取り組むべき」と述べた。
これを受けて柴田副会長は、「グローバル化の中で、日本は門戸を開放し、内外のヒト、モノ、カネ、情報を活用する“内なる国際化”によって、多様な価値観に裏打ちされた国際競争力を強化しなければならない」との考えを強調した。
国際競争力強化に関連して、金属労協から、政府への働きかけについて、「FTA(自由貿易協定)問題で、製造業界は農業団体に比べて政府への対応で後れを取っている。今後、タイムリーに政府に主張を伝えていくことが重要だ」との意見が、また人材の問題については、「日本のすぐれたものづくりを支えている徹底した改善マインドが、モラールの低下によっていまや危機にさらされている」と危機感を示すとともに、「労使はあらゆる局面で、働く人の質の維持に努めるべき」との意見が出た。
競争力と処遇の関係については、「日本でなければ作れない付加価値の高い製品を生産できる企業は、競争力に加えて魅力ある企業であり、そのような企業のベースには高い収益力とよい労働条件がある」ことを理由に、「日本経団連は一律にベアを否定するといった主張をすべきでない」と述べた。
企業戦略については、「世界市場で日系のメーカー同士が行き過ぎた価格競争やコストダウン競争を展開している。これを改めないと、国内企業の衰退化・空洞化が加速する」との考えを示した。
これに対して日本経団連は、日本の農業を国際競争力を持つ産業に育て上げることや、政治システムの変更により日本としてFTA問題に対する統一した意見を示すことの必要性に言及した。
また、産業空洞化問題については、海外からの企業誘致や、産業クラスターなど産学連携しての新産業創設によって対応すべきだとした上で、「そのためには規制緩和や優遇税制など、国の環境整備が必要である」と述べた。
日系メーカー間での過当競争についての指摘には、「フェアな競争であれば優勝劣敗が起こるのはやむを得ず、勝ち残った企業が海外の企業と闘うことになる」と語った。
懇談会ではこのほか、金属労協が、「海外事業展開に際しての労働・雇用に関する企業行動規範の労使締結の面で、日本は立ち遅れている」として、経済界に理解と協力を求めた。