経営タイムス No.2701 (2003年11月27日)
日本経団連は20日、都内のホテルで谷垣禎一財務大臣をはじめとする財務省幹部との意見交換会を開催した。財務省からは谷垣大臣のほか、山本有二副大臣、石井啓一副大臣らが、日本経団連からは奥田碩会長のほか、司会進行役を務めた櫻井孝頴・評議員会副議長兼財政制度委員長、森下洋一・評議員会議長兼税制委員長、各副会長らが参加。年末にかけて、公的年金制度改革や三位一体改革、税制改正など重要課題が集中するなか、財政改革や税制改革、社会保障制度改革などについて意見を交わした。
冒頭あいさつで谷垣財務相は、今の日本経済について、「かえりかけの雛が卵の殻を一生懸命叩いている状態」と比喩し、「政府・民間が一緒になって殻を割っていかなくてはならない」と述べた。
さらに谷垣財務相は、(1)民主導・自律型の経済社会の実現(2)持続可能な社会保障制度の確立(3)安心で安全な治安の実現――を課題として挙げ、平成16年度予算に反映させるなどして取り組む意向を示した。
奥田会長からは、「財政、税制、社会保障の改革がなければ日本経済はよくならない」として、掘り下げた議論の必要性を指摘するとともに、早期に改革の道筋を描くべきであることを訴えた。
意見交換では、公的年金改革について西室泰三副会長が、潜在的国民負担率や社会保障全体の議論なしに、拙速に負担増を求めるのは遺憾と発言。森下・評議員会議長からも、公的年金の国庫負担引き上げの財源として、現役世代が負担する個人所得税の定率減税を充てることは本末転倒との考えを示した。
また、国と地方の改革について西室副会長が、国と地方を通じた公的部門のスリム化と地方交付税制度の見直しを求めたほか、柴田昌治副会長は、「日本経団連が提唱している“州制”の導入を見据えて、国の関与を極力縮小すべきだ」と提案した。
税制改正については、森下・評議員会議長が、租税負担・社会保障負担の抑制とともに、法人税の欠損金の繰越期間延長や減価償却制度の見直し、住宅ローン減税の拡充・延長等を求めた。特に住宅ローン減税については奥田会長も、「最低限、現行制度の継続が必要」と現行制度の延長を要望した。
これらの発言を受けて財務省側は、年金改革については、(1)保険料と税をあわせた負担水準に関するコンセンサス形成(2)早期の給付抑制(3)国庫負担の引き上げについては給付と負担の総合的改革の中での検討――が必要とコメントした。
また、国と地方の問題については、「地方交付税の財源保障機能の縮小や地方向け補助金の廃止・縮小等について、説明責任を果たしながら進めていきたい」と語った。
法人税制見直しについては、税収の歳出総額に占める割合が5割程度に留まる厳しい財政状況を踏まえて検討すべきとの考えを示した。
日本経団連が拡充・延長等を求めた住宅ローン減税については、「景気対策としての意義、住宅政策充実の必要性は認めるが、減収額が大きいことから、現行制度の精査が必要だ」と応えた。