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経営タイムス No.2687 (2003年8月7日)

講演「日本の活力再生に向けた諸施策」

−日本経済再生の課題を提示/大阪大学院教授・本間正明氏


第2日第1セッションでは「日本の活力再生に向けた諸施策」をテーマに、本間正明・大阪大学大学院教授が、経済財政諮問会議議員として小泉改革を支えている立場から「日本経済再生の課題」について講演を行った。

本間教授はまず、日本経済の低迷と混乱の状況を分析し、この10年間で資金が民から公に流れていることや、民間部門の生産性、特に国民経済の7割を占める非製造業の生産性が低下していることを指摘。「小泉構造改革の課題は『官から民へ』の方向性を強く打ち出し、民間部門の再生を果たすことだ」と述べた。
また、生産性低下が生じている理由として、(1)構造改革を怠ったため、経済全体で為替レートの上昇を克服できていない(2)資産価格が下落し、経済安定のためのバッファーとして資産が機能しなくなった(3)中国の市場経済への本格参入が進む中、超過需要経済から超過供給経済への転換ができていない(4)今日、科学技術のパラダイムシフトが起きているが、それに対応するシステムワーキングが硬直的である(5)人口構成の変化と価値観の多様化が起きている中で、供給側が細かな需要に応えられていない――ことなど外的条件のドラスティックな変化を挙げ、それらへの対応の必要性を強調した。
今後の構造改革については、「構造改革の柱となるのは、政府が経済を邪魔しないという考え方である。民でできるものは民で行うべきだ」とし、民間への移行を阻害している政策が、歳出・税制面で行われていると批判、社会保障の問題も含めた歳出・税制・規制改革の必要性を訴えた。

さらに本間教授は、「経済構造改革と政治改革は一体であるということを実感している」と述べた上で、「各階層、業界からの不満を吸収し解消していく戦後の政治プロセスが、資源の重点配分を妨げ、成長を阻害している。今後、内閣と与党などが政府を民主的にガバナンスするシステムとなるよう改善すべきである」と指摘した。
構造改革における経済界・企業の役割については、「日本の政治的特徴を変えるには、コーポレートシチズンシップ(良き企業市民としての社会的活動)の健全な発揮が必要である。投票や寄付・献金などの具体的アクションをとることで、政府をガバナンスする行動を積極的に行ってほしい」と、経済界の政界への影響力発揮を求めた。

質疑応答・討議

<日本経団連側>

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<本間教授>

ジレンマに悩まされる問題だ。科学技術、人間力、高齢化対応、環境について、予算イノベーションを通じて民間需要に跳ね返る誘発効果を高めたい。

<日本経団連側>

技術開発に手厚い予算配分がなされたが、効率的に使える仕組みになっているか疑問である。

<本間教授>

予算削減については、政治家も含めて抵抗がある。整合的かつ具体的なプライオリティ付けを経済界から提案してほしい。

<日本経団連側>

相当な海外投資が行われ、設備投資が国内雇用に結びつかぬ状況が生じている。

<本間教授>

国内型製造業の構造変革を資金過剰、過剰雇用問題も含めてきちんと解決する必要がある。加えて、非製造業の合理化も不可欠だ。

<日本経団連側>

職住接近、老若近接の施策を展開することで少子化を食い止めるべきである。地方の活性化対策にもそうした視点が必要となる。

<本間教授>

地方の再生についてはその通りだ。地方の個性化や多様化が図られる形で各種の規制を改めるべきである。


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