経営タイムス No.2684 (2003年7月17日)
日本経団連の経営労働政策委員会(経労委、議長=奥田碩会長、委員長=柴田昌治副会長)は15日、東京・大手町の経団連会館で今年度最初の会合を開催した。奥田議長と柴田委員長が開会あいさつした後、事務局の説明と委員間での意見交換を実施、今年度の同委員会活動がスタートした。
開会あいさつで奥田議長は、2003年版の経労委報告のメッセージで特に、(1)21世紀は多様な価値観の時代である(2)賃金の社会的相場形成を意図して闘う「春闘」は終焉した――の2つが、全国の経営者に強く浸透したのではないかと所感を述べた。
さらに、今後の労使交渉は横並びの時代ではなく、多様な価値観の時代であるとし、労使交渉における経営者の指針を作成する同委員会の役割の重要性が一層増していると強調した。
続いてあいさつした柴田委員長は、自身が今年1〜3月にかけて経労委報告の説明のために地方で講演を行い、地方の経営者と懇談した際の印象を、「労使協議や賃金決定の指針として、経労委報告が広く認知され、評価は高いと実感した」と語った。
あいさつ後、配布資料について事務局が説明したのに続いて、委員間で意見交換を行った。今後、同委員会は月1回程度開催し、12月に2004年版の経労委報告をとりまとめて発表する予定。
昨年12月に発表した2003年版の経労委報告では、多様な価値観が生むダイナミズムと創造を実現することによって、わが国の新たな展望を切り拓くことができると述べている。また、春季労使交渉に関しては、雇用維持と国際競争力強化の観点から、名目賃金水準のこれ以上の引き上げは困難、ベースアップは論外と主張。さらに、賃金の社会的相場形成を意図する「春闘」は終焉し、今後は労使で問題意識を共有して幅広く討議し検討する「春討」としての色彩が強まるとしている。
◇ ◇ ◇同委員会は、1974年に発足した旧日経連の「大幅賃上げの行方研究委員会」を前身とし、春季労使交渉における経営者の基本的態度・考え方をとりまとめ、労使交渉に直接・間接に関係する重要な課題についての見解を示す「労働問題研究委員会」(労問研)を引き継いだもの。
今年度の同委員会は、7名の新委員を加え、34名の委員と7名のアドバイザーの計41名で構成。議長は奥田会長、委員長は柴田副会長。委員は槙原稔副会長、香西昭夫副会長、千速晃副会長、西室泰三副会長、樋口公啓副会長、御手洗冨士夫副会長、宮原賢次副会長、庄山悦彦副会長、出井伸之副会長、武田國男副会長、和田紀夫副会長のほか、関係委員会委員長らが務めている。