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経営タイムス No.2674 (2003年5月8日)

日本経団連、政府の「知的財産推進計画」へ意見発表

−国際競争力維持・強化へ取り組むべき課題を提示


日本経団連は4月18日、政府が今年7月をめどにまとめる「知的財産推進計画」への意見を発表した。同意見では、日本の産業が国際競争力を維持・強化していくために、企業自らが独創性の高い研究開発と、事業化のための技術開発の双方を進め、戦略的に知的財産権を取得・管理していくことが不可欠とした上で、政府においても、企業の真摯な努力をさらに引き出すための制度改革や支援が期待されるとしている。日本経団連はこれまでも、政府の検討に際して意見を表明してきたが、今般、政府が「知的財産推進計画」をとりまとめるにあたり、取り組みをさらに進めるべき課題について意見を述べている。同意見の概要は次のとおり。

1.大綱に沿って取り組みが行われている課題

  1. 産学官連携では、例えば企業が自社で実施した場合の大学側の持ち分に応じた実施料の支払いについて、ケース・バイ・ケースで事前に柔軟な取り扱いがより一層行えるようにすべきである。

  2. わが国の将来にとって特に重要な技術分野においては、先行技術調査と審査の双方の経験を通じて審査能力を高めるとともに、審査官を増員し、審査の充実を図るべきである。

  3. わが国においても、知的財産高等裁判所を設置すべきである。知的財産高等裁判所では、技術裁判官が活躍し、大法廷の導入などによる裁判例の統一機能を通じて、判決の予見可能性の確保が期待される。

  4. 模倣品や海賊版への対策強化については、民間自ら積極的に取り組むとともに、政府もわが国の知的財産が諸外国で十分に保護・活用される環境の整備を、諸外国に働きかけるべきである。

  5. 知的財産権侵害品に対する水際措置については、輸入者や輸出者などの侵害品に関する情報を、税関は権利者に開示していくべきである。

  6. 医療特許については、先端医療分野で医療行為関連発明への特許権付与を早急に実現するとともに、医療関連行為発明全般についても、特許権を付与すべきである。

  7. 世界特許システムの構築への取り組みを加速すべきであり、審査の質においても、国際的に調和の取れたものをめざしていくべきである。

  8. 知的財産に関する情報開示と知的財産価値の評価にあたっては、企業の判断や創意工夫を尊重すべきである。

2.大綱に沿って改革を具体化すべき課題

  1. 職務発明の対価額の決定は裁判所ではなく、企業が合理的なプロセスのもとで定めた取り決めに委ねるべきである。

  2. 知的財産ライセンス契約については、ライセンサーの倒産時や知的財産権の譲渡時においても、ライセンシーの立場に影響が出ないようにすべきである。

3.推進計画で新たに取り上げるべき課題

  1. 国際競争力の維持・強化に向けて、政府は技術戦略、国際標準化戦略、知的財産戦略を一体的に推進するとともに、そうした企業の取り組みを支援すべきである。

  2. 知的財産管理会社が、グループ会社全体の知的財産権を一元的に管理できるようにすべきであり、さらには、権利行使を通じた活用を行えるようにすべきである。

  3. 国境をまたがるインターネット関連特許の実施については、国内法の扱いや国際ルールの検討を積極的に進めるべきである。

  4. 技術と法律の双方がわかる人材が技術裁判官として活躍できるよう、技術の素養を有する者がロースクールで学べる機会を増やすとともに、司法試験の選択科目に、知的財産法と技術の科目を加えるべきである。

4.大綱の趣旨実現に向けて産業界で特に自主的に取り組むべき課題

  1. コンテンツ産業とIT産業協調による産業力強化の観点から、違法コピー問題やコンテンツの流通拡大などについて、関係産業が協力して取り組むべきである。

  2. 海外展開によって収益を多くあげていくためには、自社・他社の技術を問わず、海外展開によって生ずる意図せざる技術流出の防止に、産業界が積極的に取り組むことが重要である。


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