経営タイムス No.2665 (2003年2月27日)
日本経団連と公明党は20日、東京・大手町の経団連会館で懇談会を開催した。懇談会には、公明党側から神崎武法代表はじめ20名、日本経団連側から奥田碩会長はじめ22名が参加。国内外における重要政策課題について意見交換した。
開会あいさつで奥田会長は、新団体発足後初の公明党との懇談であるとした上で、「日本には政策課題が多い。積極的に意見交換したい」と語った。
神崎代表は、「日本のもっている潜在力・技術力を産業力にどう結びつけるかが重要だ」と指摘。さらに、「公明党は人を大事にし、個性が輝く社会を実現したい。日本経団連の新ビジョンと考えは同じだ」と述べ、意見交換を通じて政治に反映させたいとの意向を示した。
続いて、日本経団連側から4名、公明党側から7名が意見を述べた。
日本経団連側からはまず、奥田会長が新ビジョンについて、社会保障制度改革を中心に説明。少子・高齢化の進展に対応した税制、財政、社会保障の一体的改革が不可欠との認識を示すとともに、「国民が広く浅く負担する消費税の議論をいまから始める必要がある」と語った。
片田哲也副会長は、「3月期の企業決算は20%の増益となる見込みだが、これは輸出増と企業努力によるもので、本格的な回復とは言えない」と述べた上で、日本の経済情勢の実態は見かけ以上に厳しいとの認識を示した。
西室泰三副会長は、公的年金の保険料率の段階的引き上げと保険料固定方式の採用を柱とする厚生労働省提案について、「現役世代と企業の負担が増し、経済の活力を削ぐものである」と指摘。基礎年金の国庫負担2分の1への引き上げについては財源が必要であるとし、消費税の活用をタブー視することなく議論すべきとの考えを披露した。
西川元啓・経済法規委員会企画部会長は、(1)定款授権に基づく取締役会決議による自己株主の取得 (2)中間配当限度額の計算方法の見直し――など商法等の一部を改正する法律案の今国会での早期成立を求めた。
公明党側からはまず荒木清寛・法務部会長が、自己株主取得に関する議員立法について、法務部会で前向きに検討し早急に結論を出したいとの意向を明らかにした。
福島豊・厚生労働部会長は、公的年金の保険料固定方式は将来的に必要とした上で、「安定した恒久的な制度をめざしたい」と述べた。また、安定した財源確保の一環として、消費税も議論の対象になり得るとの見解を示した。
森本晃司・経済産業部会長は、産業再生のために産業再生機構のトップ人事がポイントになるとの考えを示した上で、「産業再生機構が日銀の協力をどう取りつけるかが重要だ」と述べた。
日笠勝之・税務調査会長は、公明党作成の中小企業向けのパンフレットを配布していると、中小企業への取り組みを披露した。また、消費税の引き上げについては、平成16年度改正では難しいとしたものの、将来的にはやむを得ないとの見方を示した。
上田勇・財務金融部会長は、不良債権処理を長年の懸案事項とした上で、「目的は経済活性化であり、経済を壊すことではない」と語った。
北側一雄・政務調査会長は、(1)個人消費陰りの要因として、賃下げがあるのではないか (2)デフレ対策について、日銀はかつてない緩和をしているがその資金が結局銀行に集まってしまい流通していない――と述べた。
緊迫しているイラク情勢については、これまでの経緯から現在の対応に至るまでを、冬柴鐵三・幹事長が報告した。
最後に、奥田会長は「日本をよりよくするために、経済界の提言にも耳を傾けて欲しい」と要望。神崎代表は、「今後とも意見交換を行っていきたい」と応え、閉会した。