経営タイムス No.2663 (2003年2月13日)
日本経団連は7日、東京・大手町の経団連会館で「起業フォーラム」を開催、日本経団連会員やベンチャー企業から166名が参加した。昨年7月、11月に続き3回目となる今回は、企業間連携を具体的に推進することが狙い。日本経団連会員企業から日立製作所と旭化成が新規事業への取り組み事例を報告するとともに、ベンチャー企業8社が事業内容や経営戦略を紹介。懇親の場では、参加した企業や登壇したベンチャー企業などの間で、さらに細かな情報を交換し合い、企業間連携の可能性を探った。
フォーラム冒頭あいさつした高原慶一朗・起業フォーラム代表世話人(ユニ・チャーム会長、日本経団連評議員会副議長、新産業・新事業委員長)は、「21世紀の日本再生は経済の活性化なくしてはあり得ない」と述べ、活性化のシナリオの1つとして、21世紀型の新たなビジネスモデルをつくる必要があることを強調。起業フォーラムの場で、大企業のもつ経営資源と、ベンチャー企業の感性・意欲を組み合わせて、21世紀型ビジネスモデルを提案することが日本再生への貢献につながることから、今後も、同フォーラムを積極的に開催していく考えを明らかにした。
続いて日本経団連会員の大手企業2社が、新規事業への取り組みや活動状況などを紹介した。
日立製作所の以頭博之・CVC室部長は、同社が2000年7月に設立した「日立コーポレート・ベンチャー・キャピタルファンド(日立CVCファンド)」について説明。同ファンドは、事業連携をめざしたベンチャー投資や新技術・新事業機会探索などを主な目的とし、30から40の投資が目標、現在までに22件の直接投資などを行っていることや、今後さらに、社内外の情報、資源などを活用することによって、新事業開拓につながる活動を推進していくことなどを報告した。
旭化成の森本厚彦・ネットビジネス推進部部長は、同社が住宅分野に事業を拡大したことによって、生活者のさまざまなニーズを把握し、モノづくりのほかに健康、社会貢献をテーマとする新たな生活支援サイトを、地方で実験的にスタートさせた経緯を紹介。地方自治体の協力や地域市民の知恵を借りながら展開する地域支援活動の中に商機があることなどを示した。
大手企業の取り組み紹介のあと、2つの分科会に会場を移し、ハイテク、生活関連分野で事業を展開しているベンチャー企業8社が、自社の企業コンセプトや事業内容、経営戦略などについてそれぞれプレゼンテーションを行った。
登壇したのは、ハイテク分野では、ラティス・テクノロジー、ユーケーテック、ネクスターム、ナノテックの4社、生活関連分野では、ナノキャリア、e―アグリ、イデアインターナショナル、シニアコミュニケーションの4社。
プレゼンテーション後には会場から、「収益の伸びの予想と手ごたえ」「顧客ニーズのつかみ方」「リスクマネジメント」などについて質問があがった。
さらに、フォーラム最後には懇親の場を設け、大企業・ベンチャー企業双方のメリットになる連携を求めて、参加者が積極的に情報を交換した。
起業フォーラムは、会員企業経営者とベンチャー企業経営者との情報・意見交換、人的交流を通じて、起業家精神の涵養と企業間連携の推進を図り、新産業・新事業を創出することが狙い。現在、ベンチャー企業98社、日本経団連会員企業227社が、会員として登録している。
昨年7月の初回フォーラムでは、アドバイザーを務める奥田碩・日本経団連会長があいさつしたほか、日本経団連首脳とベンチャー企業経営者が意見を交換し大手企業・ベンチャー企業両者が求めるものを明らかにした。続く11月の第2回フォーラムでは、島田晴雄・慶應義塾大学教授の講演のほか、ベンチャー企業と大企業でパネル討論を行い、企業間連携成功のポイントなどを探った。