輸送委員会 企画部会(部会長 横山善太氏)/12月20日
輸送分野に係る規制緩和要望の取りまとめにあたっては、公共的な性格を有する旅客鉄道等の輸送機関について、その料金決定方式のあり方が問題となっている。そこで、運輸省・鉄道運賃問題等検討会の委員を務める山本哲三 早稲田大学商学部教授を招き、鉄道運賃をはじめとする公共料金制度のあり方について説明をきくとともに、意見交換を行なった。
経済協力開発機構(OECD)は本年6月、“Regulatory Reform in Japan”([email protected]$+?jB`$+!Y)を刊行し、日本の規制改革に対する取組み全般についてコメントしている。そこでは、運輸部門の需給調整規制の撤廃を評価しつつも、その実行の不徹底ぶりを批判している。
運輸省は長年、需給調整の観点から参入・退出ならびに価格に関する規制を行なってきた。とりわけ価格規制においては、事業者の適正な原価を償い、適正な利潤を含むものに定めるとする「総括原価方式」に固執している。
わが国における価格規制改革は、鉄道をはじめ電気通信事業に至るまで、他の先進国に比して相当遅れているといわざるを得ない。
わが国の鉄道事業については、人口集中の緩和、景気後退等によって輸送人員は各社とも伸び悩んでいる。また、JRと代替交通機関との間で競争が激化しており、運賃横這いながらサービスの改善も見られる。しかし、大都市圏の通勤・通学、また中・長距離圏で他の交通手段に対して競争力を保持しており、地方都市圏では地域独占的な立場にある。
鉄道運賃設定方式は総括原価方式(=適正な原価+適正な利潤)が基本になっており、運賃改定にあたっては要増収額を算出した上で、運輸大臣に上限運賃の認可を受けなければならない。
現行の「総括原価方式の下での上限価格制」は、本年5月の鉄道事業法の改正によって法定されたが、あくまで従来型の総括原価方式の枠内のものである。
運輸省による運賃改革は基本的に、(ア)利用者利益の増進、(イ)経営効率化、(ウ)事業者の自主性の確保、(エ)規制の透明性の向上と規制コストの削減、等を旨とするものであるにもかかわらず、現行の総括原価方式には数多くの問題点が見られる。
すなわち、
これに対して、純粋な上限価格制(プライスキャップ方式)とは、消費者物価指数の上昇率を基準とし、事業者に価格決定・変更を自由に行なわせる方式である。事業者の利潤ではなく価格を直接規制する価格決定方式であり、上限の枠内で価格規制を行なうことによって、企業の利潤動機を積極的に容認するため、費用最小化を促すインセンティブ規制の代表例と言える。
また、実行可能性が高く、競争両立的な規制であるため、政策化しやすいという特徴がある。実際、英国の鉄道、電気通信事業をはじめ、他の先進国が過去10年間でプライスキャップ規制を導入している。
さらに、メリットとしては、
運輸省は、基本方針として、需給調整の廃止および上限価格制の導入を認めており、鉄道運賃に関しても、今後、こうした方向で改革が進むことになろう。その際、政策上の観点からは、設備投資と輸送力の増強という鉄道産業振興策と規制政策を分離すべきである。また、鉄道産業の将来性を見据えた上で、ピーク・オフピーク料金(混雑料金)等、需要サイドの料金政策を推進することが求められる。