経団連くりっぷ No.42 (1996年10月24日)
経団連NPO調査ミッション(団長 若原泰之氏)/9月21日〜28日
米国NPOと中間組織(インターミディアリー)の現状、ならびにNPOと企業・政府の関係を調査
同調査ミッションは、米国での(1)NPOの社会的機能と役割、(2)NPOの基盤を整備し、企業とNPO、政府とNPOを結ぶ結節点となる存在として機能している中間組織(インターミディアリー)の状況、(3)NPO・中間組織と米国企業あるいは政府との関係等について調査した。調査団は、サンフランシスコ、ニューヨーク、ワシントンを訪ね、米国の各種財団、企業・政府など、のべ13団体の関係者と懇談するとともに、活動現場を視察した。
- 米国の市民社会を担うNPO、一層機能を縮小する政府のNPOへの期待
米国のNPOは、内国歳入庁の免税措置による分類だけでも約60万団体(501(c)3適用団体)から120万団体(その他の免税条項適用団体)あり、NPOで雇用されている人口は全体の約7%を占めるなど、米国社会で大きな存在となっている。
今回訪ねたNPO関係者からは、米国には市民による自助の歴史があり、NPOは米国の多元主義、民主主義を担う存在であるとの説明が多く聞かれた。
また、ワシントンで懇談した大統領NPO担当副補佐官ドリス・マツイ氏からは、一層の政府機能の縮小を背景に、各社会サービス分野でNPOに求められる役割は今後とも拡大する旨の説明があった。
- 中間組織(インターミディアリー)といわゆる「インフラストラクチャー・オーガニゼーション」
- NPOの中でも、個々のNPOをさまざまな形で支援し、NPOと企業、政府をつなぐ結節点になる組織が、いわゆる中間組織(インターミディアリー)である。中間組織については、米国でも厳密な定義は行なわれていないが、ニューヨークで懇談したフォード財団では資金の流れをとらえ、「さまざまな財源を確保し、その資金を他団体に提供する」組織を中間組織としている。
本ミッションでは、中間組織的な役割を果たしている大型財団の関係者と懇談して具体的な活動内容や企業との関係について聞いた。また、フォード財団によって設立された中間組織LISC(Local Initiatives Support Corporation 「地域主導事業支援機構」)が政府や企業から資金を集め、それを地域住民によって組織されたNPOであるCDCs(Community Development Corporations「地域社会の再生をめざすコミュニティ開発NPO」)に提供して地域再開発に取り組んでいる現場を視察した。かつて荒廃の極に達していたといわれるニューヨークのサウスブロンクス地区がみごとに復興した現場において、地元関係者から説明を聞いた。
- 情報提供やネットワーク作りなど、資金提供以外でNPOを支援している組織もある。NPO全体の社会的基盤を整備し、全体としてNPOセクターが発展することを目的として活動している団体を、仮に「インフラストラクチャー・オーガニゼーション」(以下、インフラ団体)と呼ぶ。
本ミッションでは、主要なインフラ団体として、
- 助成財団や企業寄付に関する情報を収集・提供している「ファウンデーション・センター」、
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- NPO問題に関心のある主に大型のNPO団体が集まり、NPOセクター全体の発展に寄与すべく活動している「インディペンデント・セクター」、
- 企業による社会貢献活動推進が主要業務の一つである「コンフェレンス・ボード」
等を訪問した。
- 米企業の社会貢献活動の動向とNPO
各地の企業関係者やコンフェレンス・ボードとの懇談では、企業業績の悪化と最近1、2年の一層のダウンサイジングの影響で、「効率的」で「戦略的」な社会貢献活動に一層関心が持たれており、社会貢献活動の定量化、計測が近々実施されるとの説明があった。
一方、リーバイ・ストラウス社のロバート・ハース会長は株主のプレッシャー等で短期的な利潤の追求に走りがちな米国企業のあり方を指摘し、自己利益やイメージアップを目的とした社会貢献活動やその計測は難しいとの説明があった。
またフォード財団のスーザン・ベレスフォード理事長からは、測定可能な社会貢献活動ということになると、長期的で先駆的な活動は実施できないとの説明があった。
「戦略的」な社会貢献活動推進の視点からも、また「長期的」で「先駆的」な活動に着目する観点からも、企業とNPOとの関係は今後一層緊密になるとの説明が各地であり、NPOとの具体的な連携の重要性が指摘された。
経団連NPO調査ミッション日程
- 9月21日(土)〜23日(月)〔サンフランシスコ〕
- 七尾清彦在サンフランシスコ日本総領事主催夕食会(21日)
- ミュアウッズ(ベイエリアの自然保護区)視察(22日)
- アジア財団との夕食会およびブリーフィング(22日)
- サンフランシスコ地域の独立財団、企業財団関係者との朝食懇談会(23日)
- 9月24日(火)〜25日(水)〔ニューヨーク〕
- ジャパン・ソサエティ主催朝食懇談会(24日)
- コンフェレンス・ボードにおけるブリーフィング(24日)
- フォード財団主催昼食懇談会(24日)
- ファウンデーション・センターにおける懇談と視察(24日)
- ロバート・ハース リーバイ・ストラウス社会長との懇談(24日)
- バンカーズ・トラスト主催朝食会/ブリーフィング(25日)
- サウス・ブロンクスにおける企業・NPO・行政との連携活動視察(25日)
- 9月26日(木)〔ワシントン〕
- ホワイトハウス、NPO活動等担当大統領副補佐官ドリス・マツイ氏との昼食懇談
- 財団協議会およびインディペンデント・セクター共催合同セミナー
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