第112回景気動向専門部会(司会 遠藤理財部長)/12月8日

96年度の日本経済は緩やかな回復へ


景気動向専門部会では、最近の経済動向について関係省庁および日本銀行より説明を聴取するとともに、来年度の経済展望について意見交換を行なった。
生産が弱含みで推移するなか、在庫が積み上がり局面にあるなど、依然足元の景気は弱いが、円高修正や合理化の徹底による企業収益の増加が、企業の業況判断を改善させ、設備投資も緩やかに回復してきた。96年度は経済対策の効果の本格化や在庫調整の終了から、日本経済は緩やかな回復に向かうものの、民需主導の本格的な回復とはならないであろうとの意見が出された。
以下は、懇談の概要である。

  1. 収益増により企業マインドに明るさ
    1. 生産は10月に前月比1.2%増と2カ月ぶりに増加に転じたが、11、12月は減少が予想されるなど、依然弱含んでいる。在庫は一部に積極的な積み増しもみられるが、需要の伸び悩みによる過大感が広がっており、総じて意図せざる積み上がり局面が続いている。96年3月までに在庫調整が終了し、年度内に生産の明確な回復が実現するかは微妙である。

    2. 円高修正、利下げ、経済対策の発動など外部環境が改善する中、企業は合理化・省力化を徹底してきた。この結果、日銀短観の11月調査では、大企業の95年度の企業収益計画は製造業で8月調査に比べ9.8%上方修正され30%の増益、非製造業では6.9%増と4年ぶりの増益となった。このため大企業の業況判断も改善し、95年度の大企業の設備投資計画は全産業ベースで3.8%増と4年ぶりに増加に転じている。
      他方、中小企業の設備投資は財務体質の改善の遅れ等のため弱い動きが続いている。

  2. 96年度は緩やかな回復へ
    1. 96年度は経済対策の効果の本格化と在庫調整の終了等により、実質成長率は今年度よりは高まろう。ただし、円高への対応、雇用調整の進展、資産価格の下落圧力等構造調整が進む中で、デフレ的傾向が残り、民需主導の本格的な回復は困難と思われる。

    2. まず、個人消費と住宅投資は消費税率の引上げを控え、駆け込み需要が期待されるが、3.2%の失業率の更なる悪化、春闘ベア率の低下が予想され、96年度に大幅な需要回復は期待できない。

    3. 設備投資は、紙パ、情報通信関連業界など一部に能力増強投資が期待されるが、全般的に合理化・省力化、維持・更新投資が中心となろう。また、建築物には過剰感が強い。このため、企業は国内の設備投資について慎重な姿勢を崩しておらず、設備投資の増勢は緩慢なものに止まろう。

    4. 公共投資は、景気を下支えするものと期待される。

    5. 外需は輸入増の継続と米国を中心とする海外経済の減速により、成長率の押下げ要因となろう。


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