APECビジネス・コングレス:APB-Net II/10月22〜23日

民間版APECが大阪で開催される


経団連、日本商工会議所、大阪商工会議所、関西経済連合会の主催により、APECビジネス・コングレス:APB-Net IIが大阪で開催された。同会議には、APEC参加国・地域のうち14カ国・地域(豪州、カナダ、中国、香港、インドネシア、韓国、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、台湾、タイ、米国、日本)から、総勢81人のビジネスマン(40の経済団体、2の地域経済団体)が参加した。今回の会議は94年8月にジャカルタで開かれた第1回APB-Net会議を引き継ぐものであり、APEC域内のビジネスの円滑化、域内協力の進め方、経済団体間の連携強化などについて、民間の立場から話し合った。最後に、本年11月のAPEC大阪会議に対する提言として、以下の内容を織り込んだ共同声明を採択し、その内容を関係各国・地域の首脳に伝え、実現方を働きかけることで合意した。なお、次回会合は96年のAPEC閣僚会議および首脳会議に先立ち、フィリピンで開催される予定である。

  1. APECへの提言
  2. アジア太平洋地域の経済発展は、市場メカニズムに基づく民間経済界の活動によってもたらされている。このような認識は、今回の会議参加者の間で共通の見方となっている。APEC域内における貿易、投資活動の一層の自由化が重要であることを確認するとともに、APEC大阪会議において、以下の事項について実りのある成果を上げるよう強く要望する。

    1. 94年のボゴール宣言にあるビジョンを具現化するために大阪会議で採択される行動指針には、包括的かつ具体的な内容を折り込むべきである。今後15年〜25年を視野に入れ、貿易と投資の自由化、ビジネスの円滑化、開発協力のための措置に言及すべきである。

    2. 域内の多角的な貿易体制を強化するためには、WTOの原則と整合的にAPECを運営することが重要である。「開かれた地域主義」の原則に基づき、自由化措置については、域内はもとより域外にも無差別に適用すべきである。

    3. 域内の文化的背景や経済発展段階の多様性に留意しつつ、貿易・投資の自由化を進めるが、その際、先進国・地域は2010年、発展途上国・地域は2020年までに達成すること、また例外分野を設けることなく、包括性の原則を堅持することが重要である。

    4. 先進国・地域が率先して市場開放に取り組み、域内における自由化努力を牽引することが肝要である。

    5. 域内の各国・地域の政府は、民間の活動が国境を超えて円滑に進むように、政府規制の透明性の強化、税関手続きの簡素化、関税コードの共通化、ビザ発給制限の緩和、基準認証の調和、知的財産権の保護、紛争仲裁のための枠組の設定などの措置を採るべきである。

    6. 発展途上国・地域では、産業インフラが十分に整備されていない。域内のインフラ整備に協力して取り組む必要がある。PBF勧告にある人材開発計画を実施に移し、起業家精神、経営管理ノウハウ、貿易実務、外国語、商慣習、法規などの習得とともに異文化への理解を促進すべきである。インフラ整備と人材開発に当たっては、民間経済界の意見を反映すべく、官民が協力して取り組むことが重要である。

    7. 域内の潜在的な発展の可能性を十分に引き出すには、ビジネスにおける女性の役割が高まっていることを認識すべきである。

    8. 中小企業は域内の経済活動において重要な役割を果たしているが、人材、情報、資金調達の点で必ずしも有利な条件を享受していない。中小企業育成のための政策指針を決定するとともに、域内の中小企業に対する技術支援に協力して取り組む必要がある。

    9. 域内における環境問題に対する対策の重要性が高まっていることに鑑み、国際的な通信手段を利用した環境保全技術に関する情報の交換を促進すべきである。

  3. ネットワーク化の重要性
  4. ビジネス・マッチング、コンピュータ通信情報の共有、経済団体間の連携などのネットワーキング活動は、企業業績の向上や市場の拡大にとって不可欠である。特に中小企業にとってネットワーキングは、大企業に比べて不利な条件を克服するうえでも役に立つ。また、ネットワーキングは、様々な文化やビジネス慣行が混在する域内各国・地域間の相互理解の促進に貢献する。

    APB-Netは企業間のビジネス・ネットワークの構築を目的とするが、今回の会合では、域内の経済団体がネットワーク化に重要な役割を果たすことを確認した。その際には、新たな組織を作るのではなく、既存の経済団体間の連携強化によるネットワーク化に重点を置いている。定期会合のほか、電子メールやインターネットなどのコンピュータ通信網を駆使した経済団体間の連携強化が、ネットワーキング活動の第一歩となる。APB-Netは経済界のネットワークの推進を主たる任務とするが、企業活動以外の分野でネットワーク化が進むことも経済交流の更なる促進に繋がるものである。

  5. 今後の取組み
  6. 今回の会合にはPBF(パシフィック・ビジネス・フォーラム)の日本代表(室伏稔伊藤忠商事社長、立石信雄オムロン副会長)も参加し、9月に村山首相に提出されたPBF報告書の概要を紹介した。PBF勧告への支持が表明された。PBFの後を受け、常設諮問機関としてAPECビジネス協議会が提案されているが、経済団体としては同協議会と協力し、経済界の意見をAPECの議論に反映させていく決意である。常設諮問機関の設置が正式に決まった場合には、そのなかでAPB-Netが適切に代表されることを要望する。

    また、今回の会議で議論された政府への要望については、11月1日に開催された「貿易会議(議長:村山首相、副議長:橋本副首相兼通産相)」において、豊田会長から報告し、APEC議長国である日本が規制緩和や市場開放でリーダーシップを発揮するよう求めた。


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