経団連意見/7月31日
国際熱核融合実験炉(ITER)の日本誘致実現を求める
国土政策委員会むつ小川原開発部会(部会長 増澤 高雄氏)は、7月31日、会合を開催し、「国際熱核融合実験炉(ITER)の日本誘致実現を求める」をとりまとめ、発表した。
以下はその全文である。
- 現在、米国、EU、ロシアおよび日本の四極の協力により、人類の恒久的エネルギー源として期待されている核融合開発の研究が進められております。核融合の燃料である重水素は海水中に豊富に含まれており、これが実用化されれば、人類は無公害のエネルギー源を確保することになります。
- 米国、EU、ロシア、日本は現在、国際核融合研究の新たなステージとして実験炉(ITER)の工学設計・建設プロジェクトに共同で取り組んでおりますが、これは極めて先駆的な国際協力の枠組みの中で進められているものであり、わが国もその成功に向け重要な役割を果していくことが求められます。
- このような国際協力の下に、1998年にも建設が開始される予定の実験炉を誘致し、その研究開発のイニシアティブをとることは、21世紀に向けたわが国の先端技術研究の重要な基礎となるばかりか、世界の科学技術の発展のため、国際的に求められている責務を果たすことにもつながります。またITERの日本誘致による核融合研究の促進は、急速に経済発展が進むアジア諸国の科学技術を振興するとともに、懸念されるアジアの環境・エネルギー問題に対して一つの解決策を示すことにもなりましょう。
- そこで経団連は、国際熱核融合実験炉建設計画を実現し、併せて日本への誘致を図るべく、国をあげた取り組みをお願いしたいと存じます。いうまでもなく、ITER関連の施設ならびに研究成果は、四極が共有するものでありますが、わが国における研究開発基盤の充実という観点からみれば、公共投資基本計画において位置づけられるべき重要な社会資本の一つであると考えられます。必要な財源措置を含め、関係各位の英断を期待するものであります。
- なお日本誘致に当たっては、広大な土地を有し、新たな資源・エネルギー・環境関連の研究開発拠点として、将来発展が期待されているむつ小川原工業基地や苫小牧東部工業基地などがそれぞれ有力候補の一つとして考えられます。経済界も自ら、ITER研究の支援体制の強化や未来技術の研究タウンにふさわしい都市基盤の整備など、誘致に向けた各種の環境整備に協力する所存であります。
〔核融合とは〕
- 核融合とは、太陽で生じている反応を地上で再現するもので、海水中に豊富に含まれる重水素を活用できることから、実用化されれば無限のエネルギー源が確保されるという夢のエネルギー技術である。
重水素とトリチウムの原子核を融合させると、ヘリウムと中性子ができると同時に、大きなエネルギーが発生する。この現象を、超電導磁石により封じ込め維持し熱水を介してエネルギーを取り出し、タービン発電を行うというものである。1gの重水素とトリチウムから石油8tのエネルギーが得られる。
〔国際熱核融合実験炉計画〕(ITER:イーター)
―International Thermonuclear Experimental Reactor
- 1985年のレーガン・ゴルバチョフ会談に端を発して、多額の資金を要する熱核融合開発を21世紀中頃の実用化を目指して、国際協力のもとで進めようとする計画である。現在、EU、日本、ロシア、米国の4極が参加している。開発費は、89年試算で7,500億円で、原則として4極均等負担で進めることになっている。
- 88年に計画がスタートし90年に実験炉の概念設計を終了した。現在は、92年から開始されている工学設計活動の段階に入っている。
- 工学設計活動は、ドイツのガルヒンク、日本の那珂(なか)、米国のサンディエゴの3サイトで分担するかたちで進められており、98年まで続けられる。
工学設計活動の終了後、直ちに実験炉が建設される。なお実験炉(ITER)での実験が順調に進めば、以降、原型炉、実証炉の段階を経て実用化に向かうことになる。

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