昨年10月の行政手続法の施行に合わせ、経団連では「行政指導110番」を設置した。同法の適切な運用への監視と民間による同法の積極的な活用を促すためである。
設置後半年間における民間からの「110番」への申し立て・問い合わせは次の56件である。
[email protected];vNc$r8+$k$H!"(1) 地方ガス会社の供給区域拡張許可の取得、(2) (1)の関連会社による高圧ガスの販売営業許可の取得、(3) 個人輸入代行業者自身による通関手続の実現の3件であった。いずれも役所の申請窓口で行政指導(同業者からの同意書取り付け、通関士の関与等)を受けたことに対し書面による交付を求めたり、法的には任意とされる行政指導に従わないことを明らかにした上で申請書類を提出して当初の目的を達している。
しかし、それ以外は行政手続法の適用除外とされていたり、あるいは行政手続法に従って審査が進められても、最終的には関連の規制緩和が行なわれないために申請が認められないケースがほとんどである。
ところで経団連に問い合わせのあった56件は全て中小企業者からのもので、大企業からのものは1件もなかった。なぜであろうか。
大企業の場合は、日頃から役所との接点が多く、役所担当のセクションが置かれ、担当者を通じて緊密なコミュニケーションが図られている場合が多い。
これに対し中小企業の場合は、役所と接触する専門の担当者を置く余裕もなく、また役所の許認可を取得できるかどうかが事業の消長に直結しているため、経営者が担当者任せにせず、直接、許認可の申請に関与しており、そうした姿勢の違いが行政手続法の活用につながったのではないか。
行政手続法を活用した企業の社長が上京された折、わざわざ経団連を訪ねてこられ「これまで10年間、役所の門前払いだった。やっと行政手続法で民と官とが対等の関係で話ができるようになった」と語っていた。私はその話を聞きながら、故土光敏夫元経団連会長が「正しき者は強くなければならない。われわれはそうした人々を応援しようではないか」と口癖のように言っておられたのを思い浮かべた。